メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『逢沢りく 上下』 ほしよりこ/著 文藝春秋

2022-05-14 10:49:36 | マンガ&アニメ
『きょうの猫村さん』の作者さん

『きょうの猫村さん』公式サイト

マンガ感想メモリスト1

ミニドラマ『きょうの猫村さん』 全24話




今回初めて知った作品
同じ絵なのに、ほのぼのした猫村さんとは全く違うテイストのストーリー

キャリアを諦めて主婦に徹している完璧主義の母親
会社のアルバイトのコと浮気しているモテモテのイケメン父親
2人はニセ仲良し?








りくは、そんな母の本当にして欲しいことが分かっているらしく
「手間のかかる母親だ」と内心つぶやいている







ストーリーは勿論、ほしのさんの鉛筆で描いたシンプルな絵とセリフ書きの字が
なにより魅力的で何度も見返してしまう

よく見ると、タイトルも手書きっぽい!

コマ割りなども全部手描きで
最小限の線なのに、どんどん惹き込まれる

1コマ1コマがとても余裕をもって描かれていて贅沢な長編




【内容抜粋メモ】
親の前では泣かないのに
他人の前ではいつでも泣ける特技?があり
その姿を見ると、みんな心配して心打たれる








アルバイトさんが父の誕生日に
ペットショップで小鳥をせがんで飼わせる

小さい頃から「動物にはバイキンがあって危険」と言われて育ったためか
なにも懐かない

これだけだと毒親とも判断つかないけど
小動物を虐めるのは危ない傾向

アルバイトさんを家に呼んだ時も
母親のなにかしらの感情を汲んで
小鳥を絞めて怖がられる












母親は少し夫婦2人の時間が欲しい
仕事復帰のための勉強をしたいからと
りくを大阪の叔母の家に強制的に預ける

母同様に関西弁が大嫌いなりく
叔母、叔父、いとこら大勢の親戚に囲まれて
毎日、漫才みたいな会話の生活

絶対馴染むものかと誓って
学校でも前の制服のまま、友だちも作らないと決めるが
人情の街、大阪のエネルギーはそれを超えるものがあるw

ここの担任の神田先生だけは、りくのウソ泣きを見破る
周りは優しい人ばかりなことに気づかない








りくが好きなクラスの男の子がしきりに髪をかき上げる仕草も
心理描写が細かくて鋭い!












ママが急に資格の勉強を始めたのは
夫の浮気を知ってて、自立してりくを引き取るためか?とも想像してみた







■下巻
時坊の病気が悪化するんじゃないかって心配になったけど
猫村さんの作者さんだから、そんな悲惨な終わり方じゃないという信頼があった

手術をして、最初は伝染らないか不安になったりしていたりくも
いつの間にか心配して、母親が迎えに来ると言っても遅らせる

ウソ泣きしようとしても出来なくなった自分に気づく

子どもらしい時坊の影響で
りくの中にずっと抑えていた“子どもらしさ”がようやく表に出てきた感じ


りく:
もうすぐ帰れる
でも、今度はどこに行くのかな

あそこに帰っても、またあそこじゃないどこかへ
行かないといけない気がする

今度は自分で決めなきゃいけないのかな

でも大人になっても結局ずーっと探し続ける気がする
死ぬまで




叔父:りくちゃんはたんぱくいうか、あんまり表に感情を出してけえへんなあ

叔母:
同じ分だけ考えてても表にぱぁ~と感情を出せんのと
出せへんのとあるんやろね

叔父:感情を溜め込むつらさも大したもんやと思うで


いつも冗談ばかり言ってる叔母夫婦も
真剣にりくのことも見てくれているのが分かる

可愛がっている鳥に対して「食うてまうで」とか
ブラックジョークがきついところあるけど/苦笑









母親はりくの中学の制服を着て
元カレに会うことで自分の存在価値を確かめる







元カレ:
君はいつも自分を必要としている人を引き寄せて
その後、思いっきり突き放す
相手が傷ついてるのを見て安心してる

相手の傷が深いほど、自分が必要とされてると思ってる
そんなこと続けてたら、君自身の傷は深まるだけだし
本当に君が必要としている人は遠ざかっていくばかりだよ





夫は妻にずっと片想いしていることに気づく


りくの誕生日ケーキの話を本人に秘密だからって話しちゃう時ちゃんも可愛い
クマのチョコレートも自分が食べたくて仕方ない様子がバレバレだしw
その後、時坊に熊のチョコレートは渡せたのかなあ?


















この涙は時男くんが元気になったうれし涙?
一番いい場面で終わっていて潔い

よく読んだら、猫村さんに出てくる奥さまの10代の頃にも似てるかも
プライドが高くて、どこか天然で
完璧なようでいて、トンチンカンなところが憎めない



10代の多感な情緒、親子の精神的な自立についての話でもあるし
今のこの時期にこの作品と出会ったのも
なにか深い縁があるのかもと考えさせられた









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