今回のおしゃぶりシリーズのネタは青土社「ジャック・デリダ」田崎英明訳である。ポジション・リポート37ページ(PR37)
1:書誌的なこと
原著者の生年が紹介されていない。女性の場合はわざと隠している場合があるが男性ではあまり見ない。でインターネットで調べた。Nicholas Royleという人は数名出ている。サセックス大学教師というのは一人しかいない。驚いたことにこの頁にも生年が見当たらない。本人の写真は大きく出ている。牛みたいな顔をしたおじさんである。ま、どうでもいいことだけどね。この人は文芸評論家である。文芸評論家の書いたデリダ論ということだろう。
2:出版社を売り込むということ
出版社はRouteledgeである。かなり有名なところだ。おかしいのは原著者が数頁ごとに「ラウトレッジ・クリティカル・シンカーズ」 シリーズの名前を出すことだ。いわく編集方針はこうだから、私はこう書くとか言及する訳。無用のことだし滑稽である。まるで大出版社に依頼されて嬉しくてしょうがなくて、ことあるごとに金主の名前を連呼しているようだ。
3:デリダもおかしい。
デリダの紹介文も巻頭に出ている。絶賛である。せまい業界(哲学本出版業界)である。ギルド的な世界でお互いに持ち上げ合い、舐め合っていかなければならないことは分かる。しかし、少し行き過ぎではないか。ましてデリダは辛口の文明批評家として知られているようだから違和感がある。
4:文徳ということ
おのずから読者に伝わる文徳というものがある。この場合、現著者と訳者のそれであるが、まだ30頁あまりであるが、今いちという印象を持った。
5:第二章は「鍵観念」とある。おそらく原文ではKey Conceptsのような表現ではないかとおもうが(文章を読むとそう感じる)、これを鍵観念と訳すのはどうかな。日本語なら「中心的な概念」とか「基本的な観念」と訳すべきではないか。だいいち日本語としておかしい。