1-0で勝利。
正直言って、「疲れた」というのが率直な感想。
大敗を喫してしまったリーグ戦から中2日、それを踏まえての出場経験の少ない選手でのチーム編成。そして、元カターレの選手が複数在籍する、一筋縄ではいかない相手・・・。
難しい状況が、難しい展開につながったとでも言いますか。
「まさか」が有り得る状況で、それにかなり近づく試合展開のなかで。
それでも、勝った。勝ちきった。
プロの意地を示し、延長後半に決勝ゴールを挙げての勝利。
手放しでは喜べないながらも、それでも。
なによりも結果がもとめられたなかで、それを掴んだということ。
富山県代表となったからには、天皇杯に心して臨まねばなりません。
控えメンバー中心の編成になる、との予想通り。ほぼ別チームというくらいの選手で臨むこととなったこの試合。
GKの山田は、想定内としても。3バックが髙山、今瀬、神山の3人。MFに末木、シルバ、陽次、大山、堀。FWに高橋、マテウス。
なかでも、髙山と堀は加入後公式戦初出場。まさにフレッシュな編成であったかと。
そんなチームの、肝心なプレーぶりのほうはと言えば。
なんというか・・・無難、とでも言いますか。
それぞれ、よくやっていたと思います。あからさまに連携がとれていない、とかいうような穴もなく、決定的なピンチも招かない。
けれど、その反面、相手を圧倒出来たかと言えば、さにあらず。
これがもし、天皇杯とそれにつながる試合のプロアマ混合試合らしい展開だったなら。あるいは、リスペクトが過ぎてかたくなってしまった相手の隙を突くかたちで一方的な展開、ということも有り得たかと。
しかし、そうではなく。
新庄クラブのスタメンには、元カターレの一輝、ルーカス、松原らの名が。単純に彼らだけ見ても、若手主体のカターレの選手たちよりも、よほどJクラブを相手に戦った経験があります。
相手に決定的なチャンスは作らせなかったかもしれない。けれど、浮つくことなくきちんとやるべきことをやり遂げる意思を見せる相手に対して、押し込むことも出来す。
0-0で試合を折り返すのも妥当、という内容でした。
決して、内容が悪いのでどうにもならない、というわけではない。
けれど、そこから状況を打開する強さを上乗せするまでには至らない・・・。
もどかしい時間が続きました。
56分にマテウスに代えての松岡の投入は、まだ良しとしても。
66分、碓井と松本を投入。試合展開の打開を図ることに。
本来なら、スタメン起用した選手たちに任せて、なんなら交代無しで済ませなければならないほどの試合であったはず。
もちろん相手を舐めていたわけではないにせよ。カターレ側の都合として、それくらいはやらねば―――出場機会の少ない選手たちであるからこそ、奮起が求められていたなかで。
なにか、スタメン選手の力を借りなければどうにもならんのか?と言われた気がして。
もちろん、チームあっての選手だし、勝利という結果を求めての試合であるからには、とやかく言う筋合いの話でもないのですが。
そんななか、73分。
ルイスと安光の2人を投入。やはりカターレ加入後初出場となりました。
すると、この2人が持ち味を発揮。膠着気味な流れのなか、「お?」と目を惹くプレーぶりが見て取れました。
前線からアグレッシブにボールに絡んでいき、上手さもあるルイス。
機を見てサイドを駆け上がり、チャンスを演出する安光。
特に安光には、なんというか、頭の良さというか・・・いわゆるサッカーIQの高さのようなものを感じました。サイドチェンジからのボールを受け取る際にも、「良い位置」で受け取る能力があるように見えて。同じようなシチュエーションでも、他の選手よりもちょっとだけ内で、ちょっとだけ前で、とか・・・僅かな差かもしれないけれど、違いを出せる選手。その積み重ねがチームにとって大きな力となっていくのではないか?そんな予感を抱かせるプレーでした。
ただ、攻勢も決定的なチャンスをものにするには至らず。相手の新庄クラブ側も、集中力が途切れることはなく。
松原が伝家の宝刀・ロングスローを披露してみたり。そんなゴール前の混戦で、ルーカスが体を張ってポジション取りをしていたり。
「ああ、見たことあるわコレ・・・」
かつてカターレでプレーした選手たちの奮闘ぶりは、やはり感慨深いものがありました。
とはいえ、勝利のためには感心ばかりもしていられない。新庄クラブへのリスペクトは忘れないなかでも、それでも勝つために邁進せねばならないところ。
ただ、それでもスコアは動かないまま。
90分を戦い抜いても、決着はつかず。15分ハーフの延長戦へ。
延長戦開始前、集まったチーム全員で、おおおおっ!!!と鬨の声を上げる新庄クラブ。一瞬だけ怯んでしまうくらいに、相手もやる気充分でした。
失点したとしてもロースコアに抑え、ワンチャンスに賭ける、というプランを描いていたであろう新庄クラブにとっては、想定以上、上出来と言える手応え。
ならばこそ、たとえ得点できずともPK戦までもちこめたら、というところであったかと。
対する、カターレ。
延長までいくということは、記録の上では引き分け扱いでもあるということ。それでも決着がつくまでおこなわれるトーナメント戦。
もしも、PK戦までいったとしたら・・・カテゴリは関係ない、言わば運の世界。
そうなっては、負けだろうと。
思い起こせば、2015年に「やらかした」際も、決着はPKでの敗戦でした。
あのときは、当時期限付き移籍加入の初年度であった永井が、初めてゴールを守った試合でしたが。それが、どうにも苦い思い出となってしまったことが思い出されます。
あのときはリードを奪いながらも追いつかれた挙句のPK負け。そういった心象もよろしくなかったなかで「プロ失格」の烙印を押されてしまい、岸野監督が解任されるトリガーとなってしまったのでした。
翻って、今回。
無失点なら良いというわけでは、決してないなかで。
おそらく、PKまで行くと負け同然。実際、勢いからすれば、敗れてしまう可能性のほうが高いとすら思えました。
それよりもまず、延長戦。
たとえ押し気味に進行したとして、得点しなければ勝てないわけで。
逆に、失点するようなことがあれば、もうお手上げというところ。
事故のような失点というのは、あり得ることで。
つい最近、ホーム鳥取戦で相手のシュートが鎌田を直撃、ハンド判定でPKを献上、決められて失点してしまった、ということがあったばかり。
ゆめゆめ、油断するわけにはいきませんでした。
スコアレスのままに延長前半を終え、勝負の延長後半へ。
このまま終わるわけにはいかない。それすなわち、敗戦も同然。
プロの意地を、見せるは今!
すると、113分でした。
右からのクロスをルイスが頭で押し込み、ゴール!待望の先制点が!
ルイスの加入後初ゴール。実質的に、試合を決定づけるようなゴールでした。
ただ。
待ち望んだ得点に大はしゃぎ!とはならず・・・「はぁ・・・決まって良かった」と、安堵のため息であったのが、偽らざるところです。
そして、タイムアップ。
実に120分の戦いの果てに、県選手権を制し、優勝。富山県代表として、天皇杯出場を決めたのでした。
結果良ければ全て良し、と言い切るのもなんではありますが。
反省点も多かったけれど、それでも。やるべきことを、やりきった。結果を残してみせたということは、きちんと評価せねばならないところでしょう。
他会場では、愛媛だけでなく讃岐もまた、コロナの影響で戦わずして天皇杯不出場が決定ということがあったようで。
それに比べたならば、たとえ不格好でも、たとえ格下とされる相手に辛勝であったとしても。
やるべきことをやり切って得た県代表の座。それは、無価値などではありません。
天皇杯進出を決めたカターレが、やらねばならないことはひとつ。
富山県代表として、恥じない戦いをやり遂げること。
2週間後、高岡スポーツコアで開催される1回戦。ホームチームとして、静岡県代表・藤枝MYFCを迎え撃つこととなります。
リーグ戦ともども、必ずや勝つ!
勝利への気概を胸に、精進をかさねていかねば。