行く末遠ければ

生まれも育ちも富山県砺波市
地元サッカークラブ・カターレ富山を応援するブログ

逆転ならず敗退も、濃密な15分に示したプライド。覚悟と意地を貫き戦い抜く アルビレックス新潟戦

2023-07-20 20:46:43 | カターレ富山
3-4で敗戦。
結論だけ書けば、「延長後半15分で逆転を狙ったものの、及ばず敗戦。4回戦進出ならず敗退し、カターレにとっての第103回天皇杯は終了」ということになります。事実だけを列挙したならば。
しかし。
誰も見たことのない、誰も体験したことのない、たった15分にすべてをかける真剣勝負。
そこで繰り広げられたプレーは、単純に結果だけで「負けてしまっては意味がない」と切り捨てられるものなどではありませんでした。決して。
覚悟をもって試合に臨み、リードを許しても決してあきらめない意地を見せ、それを試合終了まで貫き通した。
そこからは、まさしくカターレ富山というクラブとしての誇り、プライドを見てとれたのでした。

まさかの試合途中での開催中止から1週間。
残り試合時間15分のためだけに再び会場が設営され、我らがホームスタジアム・県総も「試合開催日」を迎えることとなりました。
平日水曜日のナイトゲーム。1か月あまり前から開催が告知されていた先週の試合であればいざしらず。先週よりも減ったとはいえ、急遽決まった試合ながらも、それなりの数の新潟サポーターが来場していたことに、ありがたいやら申し訳ないやら。
先週の対戦に続き、土曜にはアウェイで札幌戦。そして今回で、新潟にとってはアウェイ3連戦に。
スタンドに掲げられた横断幕も、サポーターが入場すれば自動的にどこからともなく現れて掲示されるもの・・・なわけが、あるはずもなく。
それを運搬し、富山→札幌→富山と掲げ続けた人の存在が、確実にあるわけで。
想定外であったはずの今回の試合にも、「それでも!」と駆け付けてくれた人の存在が、確実にあるわけで。
もしも、逆の立場だったなら。自分たちはここまでできただろうか?
同じ日程でホーム3連戦となったカターレサポーターとしては。
そんな気合の入った新潟の側に対して、J1とJ3というカテゴリの差など関係ない。ホームを預かる者として恥ずかしくない応援でもって対峙することこそが、我々のすべきことなのだろうな、と。

状況を整理すると。
延長前半までのスコアは有効であり、2-3とカターレの1点ビハインドで開始。
交代や警告は、中断前の状態を引き継ぐかたちで再開。それ故に、96分にイエローカードを出されていた安光は、再開前から既に名前の横に黄色のアイコンが点灯した状態に。
そして、両チームともに既に交代枠を使い切っていることもあり、延長後半の途中で選手が入れ替わることもなく。開始されたならば、15分とアディショナルタイムを、ほぼノンストップで執り行うことに。

あらためて、カターレの側から再開試合の条件に付いて考えると。
やはり、不利だな、と。
天皇杯の醍醐味とも言われる、ジャイアントキリング。それが起こる要因として、上位カテゴリクラブに対して下位カテゴリクラブの情報が少ないことが挙げられます。いかに実力的に上のチームであっても、未知の相手に即応するのは、容易なことではありません。しかも、ぶっつけ本番の一発勝負で勝ち筋をつけねばならない、と。そのあたり、下剋上を目指すチームにとっての付け入る隙にもなり、上手くハマればジャイアントキリングにもつながっていく、ということなのですが。
ただ、この再開試合にあっては。
新潟にとって普段訪れることのないスタジアムとはいえ、2度目。1週間前の経験があります。
対戦相手にしても、まったくの未知の状態ではない。「あの8番(松岡)をしっかりケアしないとな」とか、対戦したからこそ知り得る情報を、既に得ている状態。情報の少なさがアドバンテージとなる部分が、一発勝負のようには機能していない、と。
さらに、交代枠を使い切っていることで、選手交代で流れを変えることもできない。
なにより大きいのが・・・1点を追うビハインド状態であるということ。無得点のままでいると、それすなわち敗戦。最低でも1点を挙げねば、負けてしまうだけ。格上のJ1クラブを相手に、どうしても得点しなければならない。それも、延長前半まで戦って消耗した状態ではなく、移動疲れを差し引いてもほぼベストコンディションという相手から。
どうにもこうにも、全方位的にカターレにとって厳しい状況。それが、目の前の現実でした。

そうして迎えた、試合開始時刻。
通常の試合のように、選手入場から整列して挨拶、集合写真の撮影など・・・いつもの試合のような段取りで進行したものの。そこから先は、いつも通りではない。
僅か15分の再開試合が、キックオフ。
ご丁寧にピッチコンディションまで雨に濡れた1週間前に合わせなくても良かったというのに。
けれど、そんなことを気にして状況把握をする時間さえ惜しい。
開始からの流れでいきなりCKのチャンスを得るなど、攻勢をかけるカターレ。選手全員が、やるべきことをやりきるという覚悟を持っていたことが見てとれました。
いきなりイエローをもらっている状態から開始の安光なんかは、特に。ここで気合が空回りして不用意なファウルからイエローを出されては、2枚目で退場、さらに選手交代でのフォローも不可能という。
けれど、だからと言って萎縮することはなく。積極的なプレーで、サイドを駆け上がりつつ相手に向かっていくことに。
大型ビジョンに備えられたタイマーは、15分からスタートして30分までの延長後半戦仕様となっていましたが・・・それを確認するのも、もどかしく。
目の前の一挙手一投足に集中しながら、応援を続けるファン・サポーター。
まずは、どんなかたちでもいい。いいから、なんとかチャンスを得点にーーー。

しかし。
ゴールを揺らしたのは、新潟のほうでした。
114分・・・延長後半9分という時点で、カウンターを抑えきれずに痛恨の失点。
勝利を確信し、詰めかけたゴール裏サポーターの下へと駆けていく新潟選手たち。
前掛りになって攻めていた以上、起こり得ることではあったものの。2点差、しかも残り時間わずかとあれば、厳しいとしか言いようがありません。
けれど。
時間がないというのは、そこで落ち込んで意気消沈している時間もないということ。
まだ終わっちゃいない。
時間が残されている限り、やり抜くのみ!
その思いは、カターレ側みんなの共通認識であったことかと。

1分1秒だって惜しい。何も考えなくていい、まずは攻勢に出て、得点につなげないと。
後がないなかで、攻撃に全振り。普段は使用しないロングスローであったり、GKの田川がハーフラインを超えて相手陣内まで来て最終ラインとなったり。
時間の感覚がなくなっていくなか、ただ、目の前の試合に全集中。瞬きさえも忘れるとは、このことかと。
そんななかで、大型電光掲示板の光が、ふと暗くなったと思ったら。
そこに表示された、「2min」の文字。つまり、アディショナルタイム2分。
あきらめるという選択肢など、無い。
いかに、得点するかーーー。
そんななかで。
まさに、もぎ取ったCKのチャンスから、キッカー松岡のボールに合わせたのは、柳下!
土弾場で1点を返すことに成功。そのままボールを抱えて、ダッシュでセンターサークルへ。
もう、時間とかなんとか、どうでもいい。
やるべきことは、同点ゴールしかないだろうが!
ゴール前の混戦、そのなかで、ファウルじゃないのか!と声を上げるも、ノーファウル判定。
そして試合終了・・・って、え?試合終了?
抗議は認められず、逆に林堂にイエローカードが出されたり。
リードされてあきらめるとかじゃない。誰ひとり、あきらめてなどいなかった。最後の最後まで、全力プレーを貫き通した。それ故の、唐突にも思える幕切れでした。

わずか、15分。
試合が終わっても、普段の試合で見られるような、精魂尽き果ててピッチに倒れ込むというようなシーンは、無し。そりゃそうか、いつもの6分の1の時間でしかないのだから。
けれども。
濃密な15分は・・・90分のそれと比べても、勝るとも劣らない密度でもって、見る者の心を打ったのでした。
力及ばず、敗れたカターレ。クラブ新記録となる4回戦進出は、なりませんでした。
けれども。
格上の新潟に敢然と立ち向かい、アクシデントに晒されながらも、覚悟と意地を貫き通した。
ファン・サポーターに示してみせた、カターレ富山のプライド。
「負けては意味がない」などとは、言わせない。
誰も体験したことのない困難なミッションに、敢然と立ち向かった選手たち。
それが無意味などで、あってたまるかと。

アウェイ3連戦となったなか、激戦を制した新潟の皆さんには、おめでとう、と。続く4回戦は、前年J1王者のマリノスに大勝した町田ですが、ぜひ頑張ってください。
そして、カターレ。
天皇杯のチャレンジが終わり、リーグ戦に集中することとなったなかで。
次節・奈良戦は、中2日ですぐにやってきます。
準備期間の短さで苦労するところもありましょうが、それでも。
この、再開試合という得難い経験を、いかに今後にフィードバックしていくか。
この先にも困難な場面というものには遭遇することでしょうけれど。
勝利こそならなかったものの、全力を出し切らねばならないところでそれを完遂したという成果は、きっと力となっていくはず。

J3優勝という、譲れない目標を達成するために。
戦いは、続きます。