Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

世界にひとつのプレイブック

2013-04-06 | 映画(さ行)

■「世界にひとつのプレイブック/Silver Linings Playbook」(2012年・アメリカ)

●2012年アカデミー賞 主演女優賞
●2012年LA批評家協会賞 主演女優賞
●2012年英国アカデミー賞 脚色賞

監督=デヴィッド・O・ラッセル
主演=ブラッドリー・クーパー ジェニファー・ローレンス ロバート・デ・ニーロ ジャッキー・ウィーバー

(※結末に触れています。ほめてません。この映画が好きなら読まないほうがよろしいかと・笑)
オスカー女優賞を獲得したというからどんなに素敵なロマコメか・・・と思って期待して劇場へ。妻の浮気で精神がマイって入院した主人公と、夫を亡くしてから自堕落な生活を送ってきたヒロインが、前向きに立ち直るまでを描いたお話。ダメ男やダメ女が成長するストーリーは基本的には好みなんだけど、何故だろう。どうもこの映画には気持ちがのらない。共感できないのだ。すぐにブチキレる未練たらたらの男、気持ちはわかるけど見ようによっては自分の主張を押しつけてる女、賭け事に没頭して人生の計画を狂わされそうになる父親、その過剰なゲンかつぎ・・・。役者たちもそれはそれで頑張ってるんだろうけど、登場人物たちの言動に共感できるところが見いだせないので、良さをどうも感じられない。

・・・銀幕に向かってじれったい気持ちになった映画は、今までそんなになかった。多少退屈はしても映画にはどこか見るべきところがあるし、そんな美点を探す映画鑑賞を心がけてきたつもりだ。この映画が好きな人には申し訳ないけど、僕には向かなかったのかも。まずタイトルからして、説明なしにはその意味を理解できない。なぜダンスなのかが説得力がない。都合のいい賭けの結末はハッピーエンド至上主義のハリウッド映画だから仕方ないとしても、いちばん気に入らないのは、唐突に相思相愛になっちゃう結末。
「え?ええええええ??????」
多分僕は映画館の暗闇で、唖然としてたと思うのだ。前置きもほのめかしもせず、いきなりハッピーエンド?いくらなんでもやり過ぎじゃないのか、これ?

ロマコメ好きなのに、最後まで楽しめなかった映画は久々かも。でもおそらく、スティービー・ワンダーのあの名曲をあんな扱いにしやがったことも原因のひとつかも(笑)。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ターザン

2013-04-05 | 映画(た行)

■「ターザン/Tarzan」(1999年・アメリカ)

●2000年アカデミー賞 主題歌賞
●2000年ゴールデングローブ賞 主題歌賞
●2000年グラミー賞 最優秀サウンドトラック

監督=クリス・バック&ケヴィン・リマ
声の出演=トニー・ゴールドウィン ミニー・ドライヴァー グレン・クローズ

 何度も映画化されたエドガー・ライス・バロウズの原作がディズニーアニメに!。正直言って、その選択に公開当時はええっ?と思った。屈強なお兄さんが主人公のディズニーアニメって、やはりイメージ違うと思うのだ。お姫様も魔法使いも出てこないお話だし。それにディズニーアニメのお約束であるミュージカルシーンは、「ターザン」の物語にしっくりいくのだろうか?という心配もあった。

 実際に観て驚いたのは、あの物語が短時間の中でしっかり凝縮されて描かれていること。ただ残念なのは、ターザンが実際に人間の文明に触れることなく島へ残る道を選択することや、最後にジェーンが島に残る決断をすることも愛情だけで片づけていることかな。人間文明への皮肉、警鐘という部分はすっかりそぎ落とされている。また、「他のゴリラと僕は違う」と言う子供の頃のターザンに、母ゴリラが「目も手も同じ2つだし、心臓の音だって聞こえるでしょう?」と言う場面が印象的だが、これはアメリカでの人種問題が背景にあっての描写なのであろう。それから、今までのディズニーアニメと決定的に違って、登場するキャラクターがよく死ぬ。死体も出てくるし、ハンターのクレイトンが死ぬ場面なんて本当にハラハラさせられる。ではあるがそこはディズニーらしく、動物たちのキャラクターを上手に使ってファミリームービーとしての形を整えている。

 従来のディズニーアニメで主人公の気持ちの代弁として歌われてきたミュージカルシーンを、ナレーションに使うという手法が実にうまい。特に冒頭、ターザンがいかにしてゴリラの母親に育てられるに至ったかを、台詞なしに映像と音楽だけでアッと言う間に納得させてしまう。今までだったら、落ち着いたナレーションが「むかし、むかし・・・」とやっていたところだ。これは音楽を担当したフィル・コリンズとマーク・マンシーナの功績がやはり大であろう。マンシーナは「コン・エアー」などの映画音楽も知られているが、そもそもはLAのセッション・キーボーディスト。イエスの「結晶」、ELPの「ブラック・ムーン」の仕事もよく知られているロック寄りの人材。元ジェネシスのフィルまで含めるとプログレ系の人脈ってことになるのかな。オスカーを受賞したフィルの主題歌 ♪You'll Be In My Heart も美しい。

(2003年筆)

ターザン スペシャル・エディション [DVD]ターザン スペシャル・エディション [DVD]
トニー・ゴールドウィン

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2005-08-03
売り上げランキング : 19152

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダーク・ブルー

2013-04-04 | 映画(た行)

■「ダーク・ブルー/Dark Blue World」(2001年・チェコ=イギリス)

監督=ヤン・スビエラーク
出演=オンドジェイ・ヴェトヒー タラ・フィッツジェラルド

映画を観ていて初めて知る現実。その驚きは心底「映画観続けていてよかった!」という気持ちにしばしばさせる。この映画から得られる知識と感動もそのひとつだ。第二次大戦でチェコにドイツ軍が侵攻、チェコスロバキア政府はあっさりと服従。チェコ空軍の数名はイギリス空軍に参加して自由のために戦った。しかし、帰国後に共産主義政権が誕生し、英国に組みしたことから彼らは強制収容所送りとなり、91年まで復権しなかったという事実。国のために戦ったにもかかわらず反逆者とされた者たちの絶望、チェコという国の置かれた政治的な状況を考えると胸が震えた。まだこんな馬鹿げたことが世の中では起こっていたのだ。

ヤン・スビエラーク監督の前作「コーリャ 愛のプラハ」は実にハートウォームな映画だった。この「ダーク・ブルー」は上に書いたような厳しい現実の話ではある。しかしそれを全面に出した政治的な映画とは違う。全体としてはすごく人間的なやさしさを感じられる映画だ。そこがこの映画の素晴らしさ。話の中心は英国空軍に参加した年のやや離れたの男二人の友情物語。信頼できるいい関係であったのが、同じ英国人女性を愛したことから関係が壊れていく。祖国に帰れば、恋人は失う、愛犬はよそのうちの犬になっている。主人公フランタが信じていたものは次々と失われていく。そして祖国の政府までも・・・。

戦争がすべてを引き裂いたといえばそうなのだが、ここで感じるのは様々なものの”もろさ”。英国空軍の誇るスピットファイヤでさえ、故障の多いボロ中古車のような戦闘機として描かれている。物語としては救いのないストーリーではある。ラストの収容所の場面。居眠りする看守の目を盗んで皆が一息つく。そこへ窓から一筋の光が差し込む。政治的に大国の思惑に左右されても、そこで暮らす人々はけなげに懸命に生きている・・・。登場人物が脇役のひとりひとりまで愛すべき人物なのが、またこの映画の魅力。空軍仲間のピアノ弾きや、強制収容所の元ナチ親衛隊医師、チャールズ・ダンス演ずる英国空軍の司令官、英語教師の女性、祖国の駅員までにそれぞれの人生を感じさせる。

(2003年筆)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする