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革命の戦士ゲバラと共に戦い、25歳の若さで殉じた日系人フレディ前村を主人公にした映画「ERNESTO」(阪本順治監督)を観る。
1959年ゲバラが広島を訪問して献花したとき、「君たちは、アメリカにこんなひどい目に遭わされて、どうして怒らないんだ」という台詞にズキッとくる。
ゲバラの人間的魅力と生き方に共感した医大生フレディ前村を演じたオダギリジョーの演技が圧巻だった。
台詞は日本語ではなくスペイン語で、まわりもキューバ人に囲まれていたにもかかわらず、よどみなく演じていたのに感動する。
作品としてはロケが多く、カストロやゲバラの人間的魅力が引きだせていない気がした。また、日本とキューバの合作映画だということで直線的なプロパガンダがやや鼻を衝く。
聴診器の代わりに銃をもったフレディ前村が恋人と別れる場面はよく描かれているが、もっと内面を刻んでくれればと思う。
また、フレディ前村が惹かれた孤高のゲバラの姿の表現もより掘り下げがあれば感動的な映画になったと思う。
フレディ前村が母国ボリビアに帰ってゲバラと連帯して闘うに至る経過も描かれているがこれも平板に流されている気がする。
しかしながら、民衆の立場に立った革命の意思を貫いた侍が南米にいたことに感動する。それを掘り起こし難題に挑んだ映画監督に敬意を払いたい。
観客って置き去りにされちゃうんだよね…。
感情を台本に乗せるって大変なのかもね。
テーマが壮大で、内容が盛り沢山だと、尚更。
ストーリーに追われてしまって
淡々と話が進んでしまう。
この日本人が、なぜ医学生を途中で辞めて
戦地に赴いたのかが、全然理解できなかった。
チェ・ゲバラの評伝はいくつもあるようですが映画では、
フィデル・カストロに出会う前に南米を縦断した時の日記から、
「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2004)
アルゼンチン、アメリカ、チリ、ペルー、ブラジル、イギリスドイツ、フランス合作
カストロに出会いキューバ革命に成功するまでの、
「チェ 28歳の革命」(2008)
その後家族も国籍も(カストロも)捨てアフリカを経由してボリビアの潜行して死を迎えるまでの、
「チェ 39歳別れの手紙」(2008)の二部作
アメリカ・フランス・スペイン合作
スチーブン・ソダ―バーグ監督(米)ですが見ごたえはありそうです。
・・・があります。老生は二部作のほうは未見。
ご批評は二部作の後編に重なるようです。
「モーター・サイクル・・・」は機会があればおすすめです。
日本には大河ドラマがあるとは言え、数本の映画でほぼ一生が丁寧に描かれる人物も珍しいですね。
この映画の前に「三人目の殺人」の役所広司の演技や是枝裕和監督の深さに感銘して見ていたので、あすかさんが指摘したように、「ERNESTO」が物足りなかったようです。
映画通のブラボーさんの造詣の深さにまたもや舌を巻いてしまいます。
ゲバラの人間的魅力が人の生き方に影響し、しかもそこに日系人がいたことは驚愕ですね。
それを見出して現地で撮影した阪本順治監督の意欲は買うべきですね。