セシル・デミル監督の映画「地上最大のショウ」(アメリカ、1952年公開)をDVDで観る。映画のタイトルは知っていたが今まで観ていなかったのでまずは観ることだ。70%はサーカスの醍醐味が存分に観られる映画だった。主演は筋肉マンのチャールトン・ヘストンがこのサーカスの座長役だ。
映画を支えたのは、「リングリングブラザーズ・バーナムベイリー」という「地上最大の規模」を持ったサーカス団だった。なにしろ、資材・用具をはじめ500頭以上の動物やスタッフ1500人以上を運ぶ車両が90両もあるサーカス専用の列車をも保有していた。映画でもその迫力が随所に出てくる。映画の後半では、その列車の事故によって化粧を落とさないわけありピエロが人命を救っていくという仕掛けが、ショウだけでないドラマにしている。
ふつう映画の上映時間は90分から120分くらいだと思うが、本作品は152分もあった。それだけ、サーカスを見せる場面をこってり見せてくれたわけでもある。衣装もこれでもかというくらい派手でファッションショウのような行進が食傷気味になるくらい。いっぽう、現実的には動物虐待で訴えられ観客も減りだし150年の歴史を持ったサーカス団も廃業となっていった。
それにしても、チャールトン・ヘストンはカッコいい。むかし、「ベンハー」という映画を観たからだ。しかし今思うと、キリスト生誕と復活に絡んだユダヤ貴族の息子(ヘストン)の過酷な運命と戦車競技の迫力とが見どころだけど、要するにユダヤ教賛歌の宗教映画でもあり、現在のアメリカのダブルスタンダードの二面性が見え隠れしてしまうのが気に食わない。
オラがずいぶん長く持っていた本に猪俣勝人『世界映画名作全史・戦後編』(社会思想社、1974.12)がある。本はすっかり茶褐色に変色してしまっている。そこには、第一部に70編の優れた名作が選ばれているが、そこには「地上最大のショウ」の名前はなかった。次の第二部の80編の映画の粗筋が書かれた名作が紹介されているが、そこにもなかった。ということは、莫大な予算とサーカスに特化した大スぺクタル規模の「地上最大のショウ」にもかかわらず、作品としては今一つということだろうか。メロドラマ風の内容が浅いということなのかもしれない。