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2009年アメリカで公開された映画「しあわせの隠れ場所」を録画で観る。原作はマイケル・ルイス『ブラインドサイドアメフトがもたらした奇跡』で、白人セレブが貧窮の黒人をプロの一流アメフト選手にしていく実話物語だ。監督はジョンリーハンコック、セレブ婦人を演じたサンドラ・ブロックは2010年アカデミー賞の主演女優賞を受賞している。
実在のマイケル・オアーをクイントン・アーロンが演じているが、最初のぎこちないおどおどしていた様子をうまく演じていた。家族全体がこの異邦人を前向きに受け入れようと、とくにサンドラのマイケルをぐいぐい成長させていく指導性に目を見張る。
また、子役の存在はぎくしゃくしたまわりの関係を和らげていく演技も秀逸だ。そのため、前半はほとんど笑顔を見せなかったマイケルも、後半になってやっと笑顔を見せる余裕をもつようになっていく。そうした過程を丁寧に演出している。しかし、穿った見方をすれば、かわいそうな黒人を白人セレブの善意で救うという、救世主白人の定番の物語にしているところが論争にもなった。
実際、マイケルの地元のスラム街の黒人たちの不気味さはその通りだったかもしれないが、黒人の多くがそのようなものとして一方的に描かれていたように思われてしまう。そこには、白人の優位性が貫かれており、ハリウッドの本音も見え隠れする。最近になって、やっとアカデミー賞を有色系人種や作品に授与するようになってきたのも事実だ。そして、人種差別主義者の大統領が2選になったいまそうした流れはどうなっていくか注視したいところだ。そんなことも考えさせる映画でもあった。