18年前に福神漬の出ている記事を載せた。この佐伯矩という人は日本の栄養学を作った人で、佐伯栄養学校が大田区馬込から今はJR蒲田駅付近に移転した。跡地は公園となっていた。この栄養学によって漬物がかなり影響があった。漬物が前近代的ともいわれた記憶がある。ただ長寿ということから見ると結構日本食は役に立っている。ただ学者の分析では日本女性の世界一はりくつにあわないという。日本を除くと、女性の長寿は男女格差に比例している。日本の女性は社会でも仕事でも格差があって、それなのに長寿世界一ということに理由がまだ見つからないという。アエラ・ドット 2023年11月
昭和5年2月16日朝日新聞
つけ物の国 佐伯 矩
我々くらいつけ物に親しんでいる国はなく、普通用いられている沢庵・浅つけ・葉つけであるがその材料及び漬け方の区別からつけ物の種類は実に驚くほど多い。
先ず、材料から言えば大根が首位を占めているがついでカブ・ニンジン・ゴボウ・瓜・ナス・なた豆・わらび・ミョウガ・しょうが・梅の実・松茸・各種野菜の根・葉・茎・果実等は殆ど用いる。
つけ方についてこれを見ても新鮮なもの、干してあるもの、若いもの、熟せるもの、単なる塩つけ・ぬかつけ・みそつけ・かすつけ・からしつけ・酢つけ・しょう油つけ・砂糖つけ・アルコールつけ・油つけ等枚挙にいとまない。
つけ物の中に重要な地位を占めている福神つけのこときはその本質においてはむしろ煮物というべきで普通のつけ物の感覚から種を異にするべきである。
昭和5年2月24日朝日新聞
つけ物の話 佐伯 矩
西洋料理の宴会から帰宅して今一度お茶漬、つけ物の口直し無しにはという人達のうらみの程もいかにやと、更に大根漬に関して一節を追加することにする。
沢庵もその固有の臭いのために外国人はもとより時には日本人でさえもこれを口にすることが出来ない者がないではない。私の知人で三人の極端な沢庵漬嫌いがあったが近頃また一人ふえた。わが国で充分に普及してもののこれを始めて試食されたときさぞかし鼻をつまんでつばを吐き手痛くけなしてことであろうと察するに余りある。
ところがどうであろう近頃つけ物に人工的な着色や味付けが流行して、沢庵に毒々しい深黄色で着色したり、浅つけの大根にわざわざ砂糖を加える愚をあえてしていたり中に浅つけの大根に密かにサッカリンでもって味付けし、このために警察より没収・廃棄を命じられる例も稀ではない。
サッカリンをもって甘味を付けたものを販売することは現に法令の厳禁するところで、これに違反してその制裁を受けることはもとより止むを得ないことであるが元来サッカリンは決して毒物ではないのである。つけ物に甘味を付ける程度のサッカリンを取締るべしとせば、その科学的構造から見て世情広く用いられている、茶もコーヒーもまた速やかにこれを厳禁せねばならぬ理がある。
この禁制は砂糖を保護する政治経済的見地から生まれたものである。なるべく近い将来撤廃されるべきものだと私は十年前から主張してきた。だから家庭では自家用のつけ物にサッカリンの微量を用いても差し支えないことである。しかし、砂糖のように栄養はなくその量をあやまると頗る味が悪い。
この当時ではすでにサッカリン規制は政治経済的見地からと広く知られていた。つまり、税収を確保するため砂糖業を保護する必要があった。=砂糖消費税