靖国神社遊就館の展示物で江戸時代の文献に出てくる女性の髪の毛で作ったロープと言うものの現物が在った。太さが直径5センチほどの黒い縄のように見えていた。解説文が無ければ今の人にはなぜ展示しているのか解らないだろう。
嘉永6年末水戸藩の造船所で竣工した西洋風の船が進水式を行ったが船が巨大すぎて(当時としては)さらに今の隅田川の深さが足りず造船所から川へ出ることが出来なかった。そもそも古来の日本の船は今の船と違って船を作る台から滑らせて進水させるのでなく綱などで引っ張りだすようだった。大潮の満潮時に今の豊洲方向に船が動き出し、干潮になって横転した。傾いた船は動かすことも出来ず、綱が切れてしまったようだ。この風景を想像するとガリバ-旅行記の小人国でガリバ-が寝ている間に縛られた風景を思い出した。最後は当時として一番強度のある素材と信じられていた女性の髪で作られた綱で船を引き出そうとした。結局大潮が来るまで何も出来ず隅田川支流で横転していたという。当時の江戸庶民の評判で厄介丸といわれていた。今は攘夷の水戸藩と知られているが海外の侵略の恐れは感じていて洋式の船をすぐに作れる危機感があったようだ。
今も昔も海によって守られている日本は国内の危機感が薄く準備も出来ない。そこに前例のないことが起きると過大な防御反応があるようだ。