築地市場内のプレハブ建物の会議室で青果部の移転検討会の会議が月一回程度で開かれ、傍聴人として参加していた。その時の議事録が東京都の公文書館にあると思うがこの公文書館も芝浦から世田谷玉川の学校の跡地に移転し、さらに水害の恐れもあって間もなく西国分寺の都立多摩図書館の隣に移転するので今は検索できない。
築地市場が老朽化し再整備が建設途上で中断した(記憶が定かでないが青島知事以前)。築地市場の人たちは築地での再建は総論賛成だがいざ工事が始まると東京都の職員に難癖付け、再建工事が止まってしまった。駐車場などの全体の利益につながる工事は速やかに進むが水産仲卸店舗の移動に伴う工事が始まると止まったようだ。この辺の状況はまとまりのない水産部の話で青果部は大田市場が混雑がなく、低温管理していて、大きな得意先が築地から大田に移動するのをただ見ているだけだった。
そんな時、2016年のオリンピック招致で東京が日本としての開催地と決定した。当時の日本経済新聞報道では冷ややかで、全国紙3紙は好意的に記事を書いていた。ライバルはアメリカの都市と書いてあった。結果はブラジルのリオとなった。東京オリンピックということで移転準備会議の内容の質・回数・真剣さが増したと感じた。2016招致計画では築地の移転が無ければ道路混雑が解消できない案だった。
当時の東京都の市場担当の職員を見ていると、ほぼ2から3年ほどで交代していた。市場担当の東京都職員が業者との癒着を恐れ移動する(条例に反する軽微な違反)。市場で働く人は勤務先の移動が簡単で、都の職員の行政指導も効かない法制度無視の雰囲気が蔓延していた。もちろん上層部は農林水産省などの指導があるので市場の法制度に従っているが、現実から離れている法律で仕事はできないと自主的に行動している。
それが事故が起きた時、いかに法を無視していたかが露見する。市場内を爆走するガソリンタ-レ-は築地市場内にガソリンスタンドがないため、違法だがポリタンクにガソリンを少量備蓄していた。ある時休市前の夜に火事が発生し、消火中に爆発があって、消火が中断した。備蓄ガソリンが引火したと思われる。この後監視されガソリン備蓄縮小のためか築地市場の火事は小規模となった。でも火事は続いた。タバコ・水槽を温める装置の空焚き、ネズミによる漏電・コンセントにたまったほこりによる漏電などであった。ガソリンタ-レ-が減った原因は東京都の電動タ-レ-補助金で新規のガソリンタ-レ-が禁止されたことになる。初期はパワ-がなく交代が進まなくなったが電気代が安いので補助金が出るたび交代が進んだ。築地がら豊洲へ移転した時、すべてのタ-レ-とフォークリフトが電動となった。そのため豊洲市場の建設工事が盛んなとき、ガンセンタ-前の2件あったガソリンスタンドのうち一件が廃業した。このスタンドはタ-レ-用のガソリンスタンドで今は更地となった。
中央卸売市場法が時代遅れということを感じる。制度自体も消えるかもしれない。ただ毎日同じ食物を食べるということはドックフ-ドのようなものだ。文句の言えない動物と人間は違うのだ。日々変わる刺激が市場の魅力かもしれない。ここは老人力が生かされる数少ないところかもしれない。