三月三日、ひな祭り。耳の日ともいうようだ。
わが家では、息子一家が里帰りして、姫孫希さんの誠にささやかな雛祭りの真似事をして大笑いの夕食を囲んだ。
保育士でもある嫁は、何かと器用で小まめに手が動く。希さんを喜ばせることなど朝飯前といった按配。
材料の調達から仕込み、仕上がりまで全て一気に引き受けて、手作りのひな飾りが出来上がった。
ウズラの卵に海苔で目鼻を付け、お内裏様の髪形も、お姫様の長い髪も全てを海苔でこしらえてある。
黄色い衣は卵の薄焼き、手に持つ扇子は人参の薄切り。胴体はおにぎりが隠されているという風に、口に入るものが原材料となっている。
デザートのイチゴショートケーキももちろん手作り。透明なプラスティック容器に盛られ、個々に頂けるようになっている。
見た目も味も珍しいお雛様。コストの安さは推して知るべし。貧乏所帯には有難い低コストながらクオリティな作品ではある。
わが家の家風などと言えば大袈裟だが、贅沢は控え倹約を宗とする家計の様子をしっかり呑みこんでくれているようだ。
2歳9ケ月を迎えた今夜の主役は、片時もじっとしていることはない。
「あかりをつけましょぼんぼりに・・・」歌っていたり、目につく物すべてを遊び道具に替えて走り回っていたり。
それでも、これまで経験してきた男の子三人とは何か一味違う気がする。今あっちで遊んでいたと思ったら、ジジの膝にチョコンと座って、ジジの好みのお茶を飲み干したり。全体の仕草が柔らかいような。
ただし、ちっちゃな身体で大人4人をきりきり舞いさせたり、腹を抱えさせたりするところは、男孫も女孫も似たようなものではある。
朝ごはんが済むとすぐに、「はたけ、いこ」「こうえん、いこ」「おさんぽ、いこ」と、あのまろやかな手でジジの手を引っ張れば、何はおいても付き合うようになる。仕上げたいパソコン作業があってもそっちが後回しになる。
そのうち、ジジ・ババの存在は、美味しいものか、お小遣いの対象でしかなくなる日が来るのだろうから、せいぜいそれまでをペットして愉しみ、当面のエネルギー源と考える方が得策のようである。