
秋の山の畑は朝霧が立ち込める日が多い。
マックスが若かった時は、畑の手前の農道が下りになる直前で軽トラから降り坂道を走った。
でも、15歳の声を聞いたあたりから足腰の衰えが顕著になり以降、坂道の下の平らな部分で降りる。
そして、ゆっくりとゆっくりとマイペースで畑まで歩いてくるのです。

坂道を文字通り脱兎のごとく走り下っていた日は過ぎ去ってしまった。
「ドッグレースに出そうか」なんて冗談を言うほどの勢いで、尻尾をブンブンと振りまわして走っていたのでしたが。

若い時は勝手に畑の周りで見えなくて心配していると草の中からピンと建てた尻尾が見えて安心したものだった。
そして、そんなマックスとの畑での暮らしはスベルべにとって何物にも代えがたい幸せな時間でも有ったのです。

藪の中を走り回って「キジ」を追いだしたり、ハチに刺されて飛び出して来て目の上を大きく腫れあがらせた事も。
そして、畑から続く斜面に消えたと思うと、「ドサッ」と大きな音で気付くと大きな石を持ってきていたり。

とにかく、マックスにとって山の畑は一種の天国のような場所でも有ったと思う。
15年余りの歳月、春から雪が降るまでこんな暮らしをしてきました。

別れの日は確実に近付いてきていると思わせられる日々。
大切な時間を、噛み締めるように共に生きているマックスとスベルべです