先日、市報の誕生・お悔やみ欄を見て、知人の名前をみつけて驚いた。
知人と言うよりも恩人に近い方。妻と翌日の弔問の予定をし、人違いであることを祈った。
翌朝、二人で訪問し「ねー、間違いでないの、住所は合っているの?」「うん、違いない」。
恐る恐るインターフォンのボタンを押すと奥様が出られた。
「あのー、ご主人は?」「お父さんは亡くなったんですよ」愕然とする。
しかも、冬に屋根から転落した事故で亡くなられたのだとおっしゃる。
2月3日、あの信越線で電車が何時間も止まった豪雪の日辺りの事だったそうです。
玄関の小屋根の雪を落とそうと足を踏み出して、そのままスリップし散水消雪で剥き出しになったコンクリートの上に、
転落してしまったらしい。
お骨になられた先生(精神科の医師であられた)先生の前の写真を見て涙がこぼれて仕方なかった。
気さくなお人柄で、一度、いや二回お酒を一緒に飲み楽しい時間を過ごしました。
また、一緒に飲みたいと言葉を交わしつつもお互いの多忙さに実現せずに今日まで来ていたのです。
初めてお酒を一緒に飲んだ際は、酔った勢いでスベルべは随分と失礼なことを言ってしまった。
「先生、私は精神科の先生って二種類いらっしゃるかと思うんですが、自分は全く正常だと思う人と、
自分も少し変かな、なんて思う人と」と問うと、先生「あ、僕は後者ですね」とあっさり言われたのだった。
後日、我が家で親しく盃を交わして、その際に御自分で語られた言葉に驚いた。
なんと、先生ご自身が何年も強度の鬱に陥り、人前に出ることが出来なかった時期が有ったのだと言われたのです。
その言葉で、ますます先生が好きになりました。北杜夫さんでは無いけれど、実に人間らしい人物です。
しばらくして、スベルべが鬱状態に陥った際に心配したスベルべママが先生を我が家に招じた事さえありました。
奥様のお話では、前日に大屋根から落下した雪で訪問客の自動車が壊れた事が先生の行動に出たと言われる。
玄関の小屋根にたまった雪が、お客さんの上に落ちたら大変だと考えられ、一人で窓から小屋根に出た。
でも、滑り止めの無い屋根で、しかも斜め横から乗り移るような体制。
先生それは無理でしたよ。そりゃ、絶対に滑り落ちますよ。魔が刺すってこんな事なのか。
買い物からお帰りになられた奥さんは、発見してご近所からの通報で来ていた救急車などに驚かれた。
警察車両など、多数の車が家の前には並んでいたと言います。
それから、3日ほどはお話も出来てご家族と会話も出来たと言います。
その後、昏睡状態に陥り、延命治療受けていたけれども5月9日に息を引き取られたのだったとか。
市報のお悔やみ、誕生のお知らせ欄は1ケ月まとめての掲載であり、気が付かなかったスベルべでした。
転落されたことも、亡くなられたこともずいぶん後になって知ったことにも悔いが残ります。
先生、先に逝ってしまわれたけれど、間も無く私もまたお近くに行くことになるでしょう。
その時は、また心置きなくお酒を酌み交わしましょう。もう少しお待ちください。今はサヨナラです。