アントニオ猪木の手(その1)
昭和40年代も終わろうかと言う頃だった。思いがけずプロレスラーのアントニオ猪木さんと握手が出来た。いや、加えて全盛期の坂口征二さんも一緒に。三月三日の、浦佐の裸押し合いの日である。ラッセル乗務専門で浦佐駅構内のラッセル分駐で冬を過ごしていた時代の事です。
休憩時間を利用して、日中も行われる福餅播きを一人で見学に出かけた。餅播きの会場の晋光寺に向かって大通りを歩いているときだった。なんだか通りの両側が騒がしい。皆の目は私の後方に向けられている。何事かと思い振り返ると、二人の大男が歩いていた。一人はプロレスラーのアントニオ猪木でもう一人は坂口征二さん。さすがに人よりも頭一つ大きく目立つ。
二人に気づき、振り返るとともに思わず握手を求めて右手を差し出した。他には誰も握手を求める人は無く、二人とも気軽に握手に応じてくれる。先ずはアントニオ猪木さんだ。手は大きいが指など華奢な感じさえして柔らか。これが本当の格闘家の手なんだと驚きを感じる。そして、次は坂口征二さん。
体もアントニオ猪木さんよりも大きく、したがって手も大きくそして硬く感じられた。どういうわけか、坂口征二さんだけが大きな藁沓を履いていたことも記憶に残る。
(続く)