縁(えにし) その2
父の実母は父が2歳の時に死亡し、親子の縁は薄かった。しかし、実家の皆さんは幼くして母を亡くした父を不憫に思い、随分可愛がってくれたように父に何回も聞かされていた。
しかし、その実家も代替わりして我が家の事など伝え聞いてはいないような様子でもあったのだ。結局、所用を理由に欠席を告げられその後のお悔やみも無かった。
我が家の下の娘は医療系の仕事につき、リハビリを専門として働いている。その娘が仕事から帰宅するなり驚きの話を伝えた。その父の実母の実家のお婆さんが娘の病院に入院していて、なんとリハビリを娘が担当していたと言うのだ。
ある日「あなたはどちらの出身ですか」と訊ねられたという。娘は「魚沼の堀之内です」と言うと、「あら、私も堀之内に親戚があるのよ」と言われ、言葉を続けて亡くなったばかりの父の名前を出したと言う。
(続く)