時々頭を持ち上げるか耳を動かす以外は じっとしています
暑い一日の可奈流過ごし方
夜がいく 夜が流れる 幸吉が死ぬかもしれない―と思った時 おりんは迷いから覚めた
人間いつ死ぬか分からないし さきはどうなるかなんて分からないのに 自分から道を狭めて どうするのだろう
少しでも幸せな時間が過ごせるなら 全然ないより 断然いい
そう気付いたのだった
幸吉は おりんの宝物だった
―いっとう大事な人― 痛み止めが効き眠る幸吉の傍らに座り その寝顔を眺める
―あたし 幸吉さんに幸せになってもらえるように頑張るね―
それは おりんの誓いだった
朝が来て お磯が誘って お照と湯屋へ行く
綺麗にして帰すのだと 張り切っているのだった
髪結いまで済ませて戻ってきて 今度は 着る物
「若い時ので 似合いそうなのがね」などと はしゃいでいる
源十は 小声で平介に言った「ありゃいつになるか わかったもんじゃない」
そういう源十も少し元気になったようだ
きらきら屋の中は明るかった
抑えた朱色の着物はお照によく映り 見立ててお磯が誰より満足そうだった
黒地で着物より濃い朱色の花が描かれた帯を合わせている
娘らしく華やかで それでいて きりりとしていて
「こりゃ てぇした別嬪さんだ 平介の奴 口が閉じられるにいるぜ」源十が笑った
ぽかんと お照を見つめ からかわれて陽に焼けた肌が少し赤くなる
お照は頬をほんのり薄紅く染める
娘らしさが際立つ
綺麗だねぇ 綺麗だねぇ―と着せておいて お磯は涙ぐんでいる
気の良い女性なのであった
礼を言って頭を下げるお照にかける言葉は「また おいでね」でなく「行っておいで」なのだった
見送って「兄妹でなけりゃ お似合いなのに」と 惜しそうに呟く
並んで歩く背の高さも釣り合いがとれていた
お磯へ源十は言う
「平介の本当のふた親は火事で死んだ 幼馴染みの大工が まだ子がなくて引き取った
だから自分と一つ屋根の下で暮らして間違い起こしちゃ 申し訳ない―と あいつは 用心してるのさ」
「おまえさん」
「ああ・・・育ててもらった恩 娘達を頼むって死んだ育ての母の言葉が あいつを縛っているのさ」
「今まで そんなこと ひと口も」
「平介の身許と死んだ実の親について説明してもらったよ 雇い入れる前に 」
心配そうに後ろ姿が小さくなっても見ているお磯に源十は言う
「気を揉んでも なるようにしか なりはしないよ」
店に着くと 勇吉と鉄太が お照に飛び付くようにして出迎えた
しがみついてくる小僧達の頭を撫でながら 「心配かけてごめんね」
平介が土産だと団子の包みを渡す
ばたばたと奥からお千加が出てきた
襟元が少し乱れている 「お照 兄さん・・・」
「お店は大丈夫だった お姉さん 心細くはなかった?」
平介の表情が険しくなった
ず・・・と 奥へ行きかけ 「大人のすることだ 野暮は言わねぇ
だがお千加 都合がいいだけの女には 成り下がるな」
奥にいる男に聞こえるように言っているのだった
「兄さん」
「商いは評判が大事だ おめぇが だらしないことしちゃ 店の主人の幸吉に迷惑がかかるんだぜ」
「あたしは・・・」
奥から新太が走り出てきて 頭を下げる
土下座して平介に言う
「もういっぺん お千加さんを嫁に貰いたいんで 今度っこそ 泣かせやせん 幸福にいたしやす」
「お千加は どうなんだ」
「あたしは まだ 三下り半をもらってなかったんです」
少し俯いて早口に答える
「幸吉が店に戻ってきたら 話し合うといい
今迄世話をかけたんだ 義理かくようなことは してくれるな」
平介はそれだけ言って店を出る
言葉が見つからないまま お照はその背を追いかける
振り向いて平介は ふっと笑った
「他に話したいこともあったんだが 次にするさ
お照は本当に綺麗になったなぁ」
つ・・・と頬をつついておいて 歩き出す
その一つ一つの仕草にお照は想う
―ああ 兄さんは男なんだ―
やがて 傷も癒えた幸吉がおりんと 西浦屋から借りた家を引き払い 店へ戻って来た
お千加は通いで店を手伝うことになり離れでお照は新しく入れる女の子と暮らすことになった
派手なことはしないが けじめはつけたい幸吉は親しい人間を集めて 三三九度の真似事をした
世話になった菊次 吉次 京太郎 お千加 新太 平介 お照 勇吉 鉄太 仲人は源十 お磯が引受けた
ささやかな宴の場で 仕切り直しの新太とお千加も三三九度の杯をかわす
深川にある料理屋は京太郎の口きき
幸吉おりんは今夜はこの店に泊めてもらう手筈になっている
座興にと菊次の三味線で吉次が踊った
「お座敷をお願いしても見られない今様天女の舞い ましてや三味は菊次姐さん わたしたち夫婦は幸せものでございます
有難うございます」
「ここへ集まったのは身内も同じ 助け合ってまいりましょうよ」と源十が頭を下げる幸吉おりんに声をかけた
親に死なれて お助け小屋にいた九つと七つの姉妹を 幸吉は店に置くことにしたが きらきら屋の夫婦が みんなまとめて泊めてくれている
きらきら屋の小僧仙七と手伝いのお花と仲良く留守番をしていた
料理屋で詰めてもらったお弁当は 子供が喜びそうなご馳走がいっぱい詰めてあった
子供達が歓声をあげる 手早く普段着に着替えてきたお照はお茶など入れて世話をしている 藍の格子の地味な色目の着物は それはそれでお照に似合っている
平介が今日ずうっと見ていたのは 花嫁や当代一の美女と言われる吉次でもなくて お照ただ一人だった
血を分けた兄ではないのだと 男としてお前が好きだと いつ言おう
男と思えない そう言われたら 諦められるのか ―かように恋する男は悩んでいた
一つはESSの部員達へ学園祭の劇での心得と 学園祭終了後の打ち上げについてのプリント
今一つは 現在楽しく連敗中のホークスが勝つという希望をこめて 作られた旅の予定表
私は将来の受験合格祈願の太宰府参りと お墓参りがメインなんだけどな~
こういうの作るのが 長男は好きです
けどホークス負けたら 泣くんじゃないかしらん
高校野球でも応援するチームが負けたら泣いてるし
連敗の後は連勝でお願いしますホークスさん
勿論 巨人も いい加減立ち直りましょうね
野球観戦がメインなら 花のお江戸の東京ドームへ行きたいです
それから古書街など小説の舞台にもなったとこ
浅草 いつも本で読むだけの場所 歩いてみたいです
棺桶待たせて いつかは?!
家の中の涼しい場所へ移動する猫の可奈は 長男がエアコンかけると いち早くその部屋へ
ガチャガチャで出てきた黄色いボールが何故かお供です
御算用日記・五
床が抜ける屋敷の貧乏藩
何故にそこまで貧乏なのか
藩の財政立て直すべく数之進は思案する
数之進の姉で大食い美人の三沙は 失恋する
そして数之進は美男の一角の見合い相手に惚れられる