夢見るババアの雑談室

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ほぼ身辺雑記です

あさのあつこ著「闇医者おゑん秘録帖  花冷えて」 (中公文庫)

2019-05-22 21:10:35 | 本と雑誌
闇医者おゑん秘録帖-花冷えて (中公文庫)
あさの あつこ
中央公論新社



「闇医者おゑん秘録帖」に次ぐシリーズ第2作

異国の血を引き 今は江戸で暮らすおゑん
色白く背が高く 瞳の色は時に紫色にも見えるという

「竹が鳴く」
おゑんが縁あって借りた家には竹林がある
風が強い日は竹林が鳴るという

裕福な商家の女房お江代に連れられて来たのは お竹
お江代の夫が手をつけてー妊娠
その腹の子をおろせーとお江代は言う


この時代 産むも堕胎も女は命懸け
おゑんが事情を尋ねるうちに お竹は自分は産みたいと言う

お江代は家持ち一人娘
婿養子が女好きなのは知っていた
悋気などではないーと話す

不思議な女 恐ろしい女 おゑんはお江代に対し奇妙な感想を抱く

やがてー
夜 訪ねてきたお江代からは血の匂いがした
夫を殺したのだと

まだ ほんの子供の頃 弟も殺したと

江戸を離れると行方をくらますお江代



「花 冷えて」

江戸の町に奇妙な病気が流行っているという
娘コロリ
妙齢の娘が倒れてそのままー

おゑんの目の前でも一人の娘が倒れた
けれど おゑんが診ても異常は無かった

なのに居合わせた別な娘が婚礼の数日前に死んだ
ある考えを持って おゑんは死んだ娘達について調べて・・・・・
犯人を突き止めた


娘を殺された母親は 自分がまだ子供が産める体か診てほしいとおゑんに言う

子供を取り上げられたままではいないと




物語の中の人ではあるけれど 強い人だなと思う
嫁入りできる年齢まで育てた娘が殺されてー
死んでー


それからまた 産んで 育てていこうという何というバイタリティーだろうかと


↓「闇医者おゑん秘録帖」を読んだ時に書いたものです

女医者
産んでは世間を憚られる腹の子を堕胎する闇の医者


そんな人間がいるという
背の高い女だそうだ
割と腕も立つ
凄味も見せる


本当におろしたいのか
産めない赤子なのか


どうしようもないのか

尋ねると言う
自分の言葉で本当の思いを話しなさいよとー

「春の夢」
縁談が決まっている若旦那は女中のお春に腹の子をおろすように言って 人から聞いたおゑんのところへ行けという
お春は おゑんに自分の思いを話して 腹の子と生きたいのだ 産みたいのだと気付くも
若旦那に階段の上から突き落とされた・・・
血だらけになっておゑんの所へたどり着き救いを求めるお春
流れてしまった赤ちゃん

後悔の若旦那はー



「空蝉の人」
鬼が毎夜 襲ってくるという その身を抱きに
そして鬼の子を身ごもってしまったのだと

謎を解き その女性の持つ本来の強さを思い出させるおゑん

鬼よりも恐ろしいのは人の心・・・・




「冬木立ち」

縁談も決まっているのに・・・・・お鈴は初めて愛した男の子を宿した
母親は言う 
おろして元の体に戻ってもらわないと困るんです


妊娠する前の娘の体になぞ 戻れるはずもない
腹の子をかきだして

身も心も傷つくのだ


風の強い夜
お春の言葉に誘われるようにー
おゑんは自分の生い立ちを語る

その身に流れる血のことも





「よたばなし」-13-

2019-05-22 09:51:46 | 自作の小説
ー莉子ー
学生かと思ったの・・・最初はー

その人を初めて見た時は

でもじきに違うと分かった
オープンキャンパス 学部の説明する大学院生
傍らには眼鏡美人

私達見学者を案内しながらのやりとりも面白くって

絶対ここの大学に入る
同じ専攻して追いかけたいって思ったの


深空野真夜(みそらの しんや)
名前も案内された時に心に刻み込んだ

入学してあの眼鏡美人はどうやらただの先輩と知って嬉しくて
でも眼鏡美人の木面衣都子(きづら いとこ)さんもとても気持ちのいい人で
こんな女性になりたいーそう思った


それに木面さんのいる研究室に行くと高い確率で深空野さんの姿を見ることができたからー
木面さんによれば深空野さんは「何かと便利な男」
肩もみとかも得意だし 一応男だから力仕事も「させられる」
美味しいコーヒーも「いれられるようになった」

距離を縮めることは中々できなかったけれど
深空野さんの姿を見られた日は ラッキー!と幸せな気持ちになれたわ


告白なんてとんでもない
姿が見られるだけで良かったの
だから誰にも言わなかった
好きだってこと

言ってしまって傍にいられなくなったらー
その方が辛いから

バレタインのチョコだって義理チョコのふりして渡したし

でもお返しに可愛いクッキーの詰め合わせをくれた
「気を遣わないでいいんだよ」
なんて言いながら


言葉を交わせた 
もう それだけで嬉しかったの

もう少しキレイになったら
そうしたら言おう
好きです
わたしのことを見て下さい

そう思っていたんだわ


それから
それから

思いがけず休講で時間が空いて 街を歩いていたら古い着物を売るお店が目に留まり
店先の飾りつけにひかれるように中に入ったんだわ


買うつもりなんてなかった
眺めるだけのつもりで

古着といっても そこそこのお値段するのだと思っていたから

そうしたら
色かしら柄かしら
何かが気を引いて手に取ってしまった


赤の底に金と銀の粉が撒かれたような 不思議な色合い
黒地の帯が合わせてあった

着物と帯とセット売りで3000円

嘘でしょう!と思ったわ

ためらわず買ってしまった

むしろお店の人が着物に合うからと勧めてくれた長じゅばんや 帯締め 帯揚げなどの方が高かったくらい

お店の人は言ってくれた
着付けもサービスでしてますから いつでもどうぞーと
「また おこしくださいませね」


それから帰ってすぐたとう紙をひろげて 飽かず眺めていた
眺めずにいられなかった


この着物を着て 深空野さんの前に立ったらー 何か言ってくれるかしら

おかしな娘と思われるかしら


そんなことをただ考えて 想像していたんだわ