宇宙・生命・日本 1000年後のあなたに語りかけたい

巨大ブラックホールの衝突が新宇宙を形成⇒循環宇宙論、有機物質から人間への進化メカニズム(循環論理の評価)⇒戦略的進化論

いまだ戦後処理は終わっていない

2007年09月09日 13時18分32秒 | 思考空間

 先日NHKの特集で、岡山の陸軍歩兵第10連隊3千人あまりの将兵たちが米軍の本土上陸を遅らせるために、フィリピン・ルソン島に送られ、帰還できたのはわずか10%程度であったと元兵士が語っていた。同じ頃フィリピンに行った父の部隊では生還者が1%程度だったと生前聞いたことがある。負けが分かっている状況で、本土上陸を遅らせることに何の意味があるのか分からない。その意味のわからない目的のために、武器弾薬も無く自らの命を犠牲にして、米軍に夜襲をかけよと命令され、圧倒的な軍事力を誇る米軍の反撃に会い、多くの方々が無残にも死んでいった。会田雄二は、何度夜襲が失敗しても同じ過ちを繰り返したと書いている。当時の日本軍の指導部は陸軍大学などの成績優秀者で占められていた。その滅茶苦茶さ・事実の粉飾・論理の無さが、何故か社会保険庁や膨大な借金を作ってきた旧大蔵省と重なって見える。

 実は、第二次世界大戦の総括・反省・対策ができていないことが、現代の日本に大きな禍根を残している。戦争は極限状態の中で、社会や人間の本質が赤裸々となり、試されている。日本がアメリカに対して戦争を仕掛けたことには当時の情勢からして全く理解でききない訳ではない。少なくとも、アメリカがイラクへ侵攻した以上の正当な理由は有るだろう。しかし、真珠湾を攻撃し勝利を収めた後に宣戦布告したことをはじめとして、軍部の作戦・命令は滅茶苦茶である。

 まず第一に何を目指したかが分からない。アジア全域に派遣を広げ、一部上層部の妄想と言うか支配欲・私利私欲を満たす為に、暴走したようにも見える。次に、人命を軽んじすぎている。まるで紙切れか歯ブラシのように、消耗品として扱い、その事が作戦・装備・補給に一貫しているために、優秀な兵士達の膨大な無駄死が戦力の著しい低下を招いている。そして、指導部が絶対に過ちを認めたく無い為に、戦争を継続させようと武器弾薬が尽きている中で大量の軍隊を投入し、貴重な人命を大量に散らしてきた。私の叔父も、特攻隊として飛行機に乗る直前に終戦を迎えている。また、理解し難い一連の無駄な作戦(消耗戦)がアメリカの原爆投下の理由となったことも否定できない。

 社会保険庁のような、国民から搾取し隠蔽してきた行動は、今に始まったことではない。戦時中の憲兵は国民を厳しく管理し恐れられていたが、一方では私腹を肥やしていたことが、各地で語られている。私が許し難いと思っているのは、立派に死んでこいと兵士を送り出し、捕虜とならず自決せよと指導してきた軍指導部が終戦時に全く自ら責任を取らなかったことだ。数百万人が死に敗戦したことを含め責任は将校以上の全員が負うべきで、例えば大佐以上の高級将校・大臣などが、腹を切るのは当たり前なと思うがどうか。つまり日本軍指導部・官僚組織の滅茶苦茶さが引き継がれ、官僚組織の根底にある。

 軍の指導部は陸軍大学・海軍大学などのエリート中のエリートだと思うが、残念ながら、知識型のエリートは知識の範囲で的確な回答・応答はできても、所詮知識は過去のものであり、こんなものがいくら頭に詰まっていても、新しい状況・困難な状況には役に立たない。「失敗の本質」の中でも彼らが授業で習ったような戦時状況は全く起こらなかったと書いている。官僚も同様で、新しい問題・困難な問題が生じると、棚上げ・先送り・隠ぺいすると一部の官僚は認めている。現在日本が置かれている状況は教科書に書いてあるような環境ではない。極論すれば官僚組織は変動する国際社会にあって無能集団化している。それが、失われた10年とか言って、バラマキ以外に何もできず自らの責任を放棄している官僚集団の現状だ。

 韓国、北朝鮮、中国、ロシアなど近隣諸国との関係は、それぞれ深刻な問題を抱えており、解決が難しい。官僚は、例えば従軍慰安婦の問題は解決済みとしているが、アメリカの下院決議へ飛び火している。北朝鮮は補償問題を取り上げており、拉致問題に対して対決姿勢を取るだけでは解決は難しい。中国は教科書に、日本軍が残虐行為したとして掲載し国民感情が悪化している。ロシアは4島はおろか2島も戻すかどうかは疑わしい。これらはいずれも戦後処理が適切でなかったことが起因している。

 日本軍指導者や指揮官は至るところで決定的な作戦ミスを犯している。それらの原因を指摘するなら、適切な目的の設定が出来ていなかったこと、目的を達成するためのシミュレーションが無かったこと、論理性・科学性を無視したこと、現場主義でなかったこと、人命を重要視しなかったこと、謙虚さと反省が無かったこと・・などである。一言で言うなら、適正な評価手法を持たなかったことに尽きる。何事も事実が何かを正確に把握することがベースになる。日本軍には事実がなく、ごまかし隠ぺいし続けた。マスコミもに軍部に従って嘘を流し続けた。現在でも、官僚は非論理的で、国民のことより自分や自らの組織を優先し、マスコミは官僚を保護し、多くの重要な事実を報道していない。

 日本はアジアの小国で資源もなく人口も少なかったにもかかわらず大国の中国などを凌ぐほど強かった。その理由として、下士官以下が非常に優秀で、強かったことがあげられる。武士階級が健在で、リーダーが優秀だった明治から大正にかけては、日本軍が強かったから、ロシアにも勝つことができた。武士は本来、戦うための心構え・厳しい精神の鍛錬ができていた。ところが、武士階級が没落し、知識エリートが支配するようになると、リーダーの資質が失われ、事実を紛失し、既得権構造の始まりとなっている。アメリカ軍が今でも優れたリーダーシップ、規律、マネジメントにより、社会発展の基準・ベースとなっているのとはえらい違いである。アメリカでは軍人出身者が企業などの経営者としても活躍しているのである。

 A級戦犯のことは私にはわからないが、戦争を指導してきた責任者であれば、敗戦が濃厚になった段階で、当時の最高責任者であった天皇に報告し、自らの命をかけても降服を進めるべきだったし、叶わぬことであったとすれば、極東裁判にかけられる前に潔く切腹すべきだった。兵士に死んでこいと言うのなら、指導部は全員切腹の心づもりと準備はしておくべきだ。裁判にかけられ死刑になるなど女々しいと言うしかない。一つの選択肢は現場で兵士と共に戦い、その中の死を選ぶことだ。

 日本が未来に向けて発展しようとするならば、先の大戦について詳細で客観的な分析と、責任者の洗い出し、反省、今後に向けた対策をなすべきである。

 社会の推移・発展を見ると、過去に習得したノウハウや仕組みを利用しては、新しい状況に対応し、目的を達成してきた。例えば、日本は農業国だったが、製造業の発展とともに農業従事者が駆り出された、そこには農業で培った経験やノウハウや忍耐力が生かされてきた。みんなが同じ方向を向いて、黙々と働く姿は農業でも製造業でも大きな力を発揮した。私は、箱に例えて説明している。棚の上にあるもの(目標)を取るために、箱(手段、ノウハウ、経験)を置く。この場合は、工業生産に対して農業というボックスが役に立った。現在の官僚が使っているボックスは、実は日本の軍部が使っていたボックスと基本的には変わっていない。新しい時代に、状況に合わせた改革をなさず、新しいノウハウを築かなかったので同じような問題に直面することになっている。

 今からでも遅くはない、先の大戦の詳細な分析と評価を実施し、多くの過ちの原因と対策、および責任を明らかにし、残された様々な課題を解決すべきなのだ。これにより、未来の発展に向けた新しいボックスが作られる。