戦後の焼け跡から不死鳥のように復興し、一度は一人当たりGDPで世界一になった日本だが、いよいよその転落が現実のものとなってきた。最大の転換期は、1990年3月に大蔵省銀行局が出した総量規制通達であり、土地価格や株価が急激に低下することとなった。バブルは自然発生的に一度は収縮するものだが、何のビジョンも戦略もシミュレーションも無く、自ら強制的に自分の首を絞めたことから、なす術も無く、後手後手に回って今に至るも日本は長期低迷を続けている。
バブル崩壊後の日本政府の政策はただバラマキを続けたことだ。何度ばらまいても日本経済は浮揚しなかったにもかかわらず、このバラマキを止めることはなかった。ばらまきは必ず自分の懐にも到達させる。ついに地方と合わせて千百兆円を超える負債を作ることになった。とてもじゃないが返済できるような借金ではない。自分で経済成長を崩壊させ、立て直しと称して、税金をばらまき続けて、ついに日本の未来さえ暗闇に捨ててしまった。官僚の、官僚による、官僚のための政策だった。これが、最難関といわれる東大法学部をトップクラスで卒業した人間のすることだろうか?
当時の大蔵省銀行局は悪魔と手を組んだとしか思えないような、世界歴史上に残る大失策をやらかした。中国やOPECはこの失敗に学び、決して自らの首を絞めるようなことはしない。中国は強大な軍事力と共産党の統制力をバックにバブルを継続させ、OPECはオイル価格の高騰を演出し、共に世界制覇を目指す。サブプライムローンの破綻もあって相対的にアメリカの力が沈下する。アメリカ追従でしかも無策の日本はアメリカ以上に沈下することとなる。
世界はグローバル化し、しかも急速に変わりつつある中で、日本だけが取り残されつつあるのは、日本を支配している官僚組織の強固で岩盤のような既得権維持体制があるからだ。官僚はものすごく頭が良いし、よく切れる。ところが、この優秀さはお勉強の範囲に限定される。新たな状況、困難な課題に対応できない。知識型人間の光と影の部分が明確になる。つまり、非常に優秀・有能に見えるが、実は、新しい状況・展開の早い動きの中では、解決策を見いだせず対応できないのが日本の官僚であり、アホ・馬鹿・間抜けを見事に演出することになる。
官僚は自らのアホ・馬鹿・間抜けぶりを自覚していない。下手に自信がありすぎるから、安易に総量規制のようなことを勝手に実施してしまう。ビジョン、戦略、シミュレーションがあれば、過熱気味だった経済を軟着陸させて、ハーマンカーン博士の予想したような21世紀の日本が実現していたであろう。年金、薬害、教育、自衛隊・・・あらゆる方面で官僚の汚職やミスリードが目立つ。
このような強固な官僚組織を維持させてきたのは自民党の長期政権のなせる業であり、例えば、自分の選挙地盤に道路を作る予算獲得に官僚の協力を取り付け、人事面で優遇する。道路を作れば、最強の選挙マシーンであるゼネコンが動く。選挙は安泰だ。このため、官僚の好き勝手を許してきた。官僚は人事で大臣の干渉も受けず天下りを繰り返し、税金を濡れ手に泡で懐に詰め込んでゆく。日本が沈没しても官僚はわが世の春を謳歌できる。
官僚の巨大帝国は日本の発展の障害となっている。この改革の第一歩として、まずは大臣の人事権を認めるところから始めなければならない。
日本が発展するには、世界貢献を含む日本発展の長期ビジョンを作り、首相や大臣がリーダシップを発揮し、官僚をそのスタッフとしてフルに働かせることだ。方針に反対し、あるいはこの方面で力のない官僚はどんどん入れ替えたらよい。日本をミスリードするよりは、地方やボランティアの現場に派遣して、日本の実体を勉強させるべきだろう。