進化のメカニズムはゲノムや分子式を追いかけるだけでは分からない。そのような単純作業で追及するにはあまりにも高度で複雑すぎるのだ。生体内では全ての構成要素が関係し影響し合っている。人間が作った機械やシステムとはまるで異なる。
従来の科学は数式を中心にシンプルさを求めてきた。シンプル イズ ベストの世界だ。確かに数式が当てはまる分野も有る。ところが生体やそのシステムは本質的にあまりにも複雑だ。アプローチが根本的に異なる。
積み上げだけでは限界が有る。だから見えない対象を解明するためにミクロからマクロまで観察レンジを変え、観察角度を変え、切り口を変えて、感覚を研ぎ澄ませて推定する必要が有る。
大胆な仮説が要求されている。様々な仮説を立てながら、比較し検証し、確証が得られた仮説を繋ぎ、組み立てる必要が有る。AIではできない最高の頭脳ゲームなのだ。
AIはビッグデータだ。莫大なデータからひたすら確率の高さを求める事になる。掘り下げることはない。真実がどうであれ精度がどうであれ、結果が出ればよい。だから微細的な内容まで精緻さが求められる進化の解明はAIに適さない。
僕は畑違いの進化を長い間、空想や推定で追いかけてきた。常識や従来説とはあまりにもかけ離れた大胆な仮説を立ててきた。一部の仮説は修正を余儀なくされた。
しかし、自分でも大胆過ぎると思うような仮説の多くが長い期間の検証の中で否定されず、生き続け、中には証明できるものも出てきた。空想が成果を生みつつあるのだ。