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作者は羽田圭介.これは単行本の表紙だが,実際に読んだのは文春9月号で.
Amazon の内容紹介によれば *****
第153回芥川賞受賞作
「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。
日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生! *****
これから漫才師になることはあり得ないが,よぼよぼになることは確実だから,個人的には「火花」よりずっと切実なテーマ.しかし気楽に読めた.
ここにある高圧的な母親と卑屈にして我儘な祖父とのやり取りに,よく似たのを先日大学病院で見た.
孫から見ると祖父はよく分からない.まだらポケかもしれないし,演技かもしれない.たぶん祖父自身にも分からないのだろう.このあたり,閉塞感の中に可笑しみが漂うところ.読み手すなわち 16 トンの年齢は祖父に近いのだが,やはり暗い穴を覗いているようで,よくわからない.幼稚な孫のほうに感情移入してしまう.
この健介は過剰介護で祖父の死を早めて「あげよう」と計画するが,それもあやふやなまま終わるところが芥川賞的.
あと十年も経つと祖父のように,情報量が多すぎるテレビには,ついていけなくなるのだろうか.