ハーマン・デイリー, 枝廣 淳子 岩波ブックレット(2014/11).
Amazon*****「BOOK」データベースより
枯渇する資源、激変し悪化する環境、格差や貧困の拡大…。「成長」崇拝は私たちに持続不可能な社会をもたらした。いま人類は、「経済のあるべき姿」の再考を迫られている。なぜ現在の「成長経済」ではダメなのか、「定常経済」とは何か、どのように移行していけばよいのか。2014年の「ブループラネット賞」受賞者でもある環境経済学の大家が、日本の環境ジャーナリストの問いに平易に答える、第一級の「定常経済」入門。*****
地球温暖化のせいで暑くてたまらない.冷房すれば大気は暑くなるという悪循環が行き過ぎた経済成長を象徴している.
地球という物理的資源は有限であり,その枠を超えて経済は成長できない.かっては漁船を大きくすれば漁獲量が増えたが,現在その量は魚そのものの生息数で制限されている.すでに人口を制限し,可能な限り低いレベルでのスループットで「定常状態」を目指すべき時代が来ている,というのが本書の説くところ.
著者は「日本はすでに人口増加の制限に成功している.日本人は伝統的に「もっと,もっと」と量的拡大をするより,質的な発展を大事にする人々であり,西洋諸国の多くの国々に比べて,所得の平等な分配を大事にしようと社会全体が考えている国である」とし,「定常経済」にシフトする好位置にある」と言ってくれている.
しかし,富国強兵という妄念に囚われた安倍内閣は,ことごとくこの逆を行っている.幸い ? 人口は減少中だが,「もっと,もっと」の量的拡大が貧富の差を増大している.この方向は一時的には「上位の人々」を守るように見えても,行き着く先は日本全体総崩れである.
日頃思っていたことを経済学の言葉で言い表してくれた本.64ページという厚さならぬ薄さも良い.