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「高塚省吾の絵の話」によれば,写真モデルの報酬は絵画モデルの場合の一桁上で,それは顔がバレるからだという.たしかにピカソの絵のモデルは同定しようと言う気にならないが,写実絵画の場合はどうだろう.
ふつうの絵 (ピカソもとりあえず普通の絵) では,画家が主でモデルは画家に隠れるが,写実絵画の場合は画家の存在が見えなくなりがちである.さらに,裸体画では人体は単なるオブジェだが,着衣の人物の絵ではモデルの生活とか人格とかが生々しく感じられる.
これは,ふくやま美術館「驚きの写実絵画」に展示されていた,生島浩「5:55」.開館当時マスコミに取り上げられた人気作だそうだ.
ホキ美術館のホームページに作家のことばがあった.
*****色調も地味なこの絵が思っていたより評判が悪くないようなので、ちょっと驚いてしまいました。おそらくは、この絵に対してというよりは、この絵に登場している彼女の魅力に反応しているようにも思えます。*****
続きがあって
*****今後も彼女をモデルとした絵を描いていきたかったのですが、残念ながら拒否されてしまいました。*****
だそうだ.
画家としては
*****対象物に克明に迫るものではなく、表現手段に因る技術的構築がキャンバスの上で為されたかどうかに関心があります。確かに「5:55」の空間を自分が演出し得たのか、実に気になるところです。*****
そして,
*****自分の絵作りに夢中な私がモデルさんに振られても当然の事と納得はしています。*****
と結んでいた.
会場の解説にはまったく別なことが書いてあった.「噂では,モデルは6時までという約束.だから彼女はもうすぐ帰れると言うそわそわした気分.それが絵に出ている」というような趣旨だったと思う.それが画家の「演出」だろうか.
「生島浩 ウィーン美術史美術館にて模写」という動画がある.5:55 の光の影がフェルメール的だが,画家ご本人は,あまりそう言われたくないらしい.