高橋 秀樹, 三谷 芳幸, 村瀬 信一,吉川弘文館 (2016/8).図書館本.
著者3人は現役あるいは OB の文科省初等中等教育局教科書調査官.類書は何冊か出版されていて,これは文科省の正式見解だろうか.旧石器から平成まで,46 のテーマについて,各 4 ページにまとめられていて,どこから読んでもいい.最後のテーマに安倍晋三の写真が出ているのは「忖度」の結果だろう.
テーマは戦後教科書の内容がどう書き改められて来たかである.自分が学校で歴史を学んだのは 1950 年代であった.その後学界の定説がどう変わったかを要領良く知るには良い本.
著者3人は古代・中世・近現代と分担したようだ.
マスコミのように「聖徳太子ではなく厩戸皇子」とか,「いい国作った 1192 年はあやまり」とか,歯切れのいい書き方はしていない.かってはスーパースターだった聖徳太子だが,今は推古天皇・曽我馬子とともにあの時代の権力の 1/3 を担ったということらしい.また 1192 年は頼朝が征夷大将軍になった年だが,そういうピンポイントの年にはたいして意味はないということ.
読んで面白いのは近世で,また昨今のエンタメ時代小説はよく歴史研究の進展を追っているなとか感心した.身分制度は「士農工商」ではなく,徳川家斉の評価は上がり,江戸の三代改革の評価は下がる.
教科書によってまちまちに扱われるテーマもあり,さらにこの本の著者も一言あったりする.調査官の先生方は教科書間の記述のばらつきを,上から目線で余裕を持って楽しんでいるように思われる部分もある.
近現代について,右あるいは左のエキスパートには,つっこみどころ満載かも.これについてはまた,明日.