【社説】:①NHK予算 事業効率化に手を尽くしたか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:①NHK予算 事業効率化に手を尽くしたか
質の高い番組を提供しつつ、公共放送として一定の節度を守ることが重要だ。事業効率化の徹底が欠かせない。
NHKは、2019年度の収支予算と事業計画を石田総務相に提出した。
収入の大半を占める受信料収入は、前年度比36億円増の7032億円を見込む。支出が7277億円と149億円増えることから、9年ぶりの赤字予算となった。
支出増は、参院選や統一地方選を控え、報道取材費が16%増えて過去最高の245億円になるのが大きい。高精細の4K・8K衛星放送の制作費も膨らんだ。
NHKは、業務全般を見直して経費削減に努めたと主張している。視聴者の理解を得るには、さらなる業務改革が必要になる。
今回注目されたのは、インターネット活用業務の予算だ。
本業はあくまで放送であり、ネット業務はその補完にすぎない。このため、費用は「受信料収入の2・5%を上限とする」と定められている。際限のない規模拡大を防ぐ狙いがある。
ネット業務の19年度予算は169億円で、受信料収入の2・4%に収めたが、安心はできない。
NHKは、番組を放送と同時にネットに流す「常時同時配信」の実現を目指している。その意向を踏まえ、総務省は放送法改正案を通常国会に提出する予定だ。
今回の予算には、常時同時配信の費用は含まれていない。19年度中に実現しても上限を守る、とNHKは説明している。
しかし、常時同時配信が本格的に始まる20年度は2・5%を超える可能性が高まろう。
NHKは視聴者から徴収する受信料収入で支えられている。上限がなし崩し的に引き上げられれば、肥大化が加速しかねない。現行の上限を維持すべきである。
災害や大きなニュースについては番組の同時配信が認められている。常時同時配信に切り替える必要性がどれほどあるのか、NHKは丁寧に説明してもらいたい。
現行の受信料制度との整合性も課題になる。テレビを保有しない世帯から受信料を徴収するのかを含めて、検討が急がれる。
ネット事業の会計区分を放送事業とは明確に分けて、経理の透明化を図っていくことも大切だ。
NHKは、今年10月の消費増税時には受信料を据え置き、20年10月から2・5%引き下げる。
視聴者に対する負担軽減策がこれで十分なのか。不断に検討することが求められる。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年01月18日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。