路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①・12.19】:エネルギー計画案 「原発低減」削除は問題だ

2024-12-19 04:03:50 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

【社説①・12.19】:エネルギー計画案 「原発低減」削除は問題だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.19】:エネルギー計画案 「原発低減」削除は問題だ

 政府の中長期的指針である新たなエネルギー基本計画で、経済産業省が「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除する原案を示した。
 
 原発の最大限活用を明記し、岸田文雄政権が昨年決めたGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針を踏襲した。
 
 「依存度低減」は2011年の東京電力福島第1原発事故を受け14年計画に盛り込んだ国民との約束だ。3、4年ごとの改定でも受け継いできた。一方的な百八十度転換は許されない。
 脱炭素化や人工知能(AI)時代の電力需要増対応が理由という。目先の電力事情で安易に削除する文言ではない。
 そもそも事故翌年に決めたエネルギー戦略では「30年代に原発稼働ゼロ」を掲げていた。14年計画当時の安倍晋三首相が「ゼロと言える自信はない」として表現を後退させた形だ。
 文言は脱原発に向けた最後のとりでである。石破茂首相は自民党総裁選で「原発ゼロに近づけていく努力を最大限する」と言及していたはずだ。
 閣議決定は来年2月の見通しだが、幅広く国民の声を聞き、与野党伯仲の国会で議論を深め「低減」を復活させるべきだ。

 ■国民論議尽くしたか

 計画策定は進め方自体に問題が多い。5月から経産省の総合資源エネルギー調査会分科会が産業政策として議論してきた。
 経済界や原子力専門家らの委員が目立ち、原発は「大量の電気を安定に供給」するとの前提で方向性を固めていった。
 再生可能エネルギー普及に懐疑的な声も大きく、太陽光や風力発電施設の部品に中国製が多いことが「中国依存になってしまった」との発言も出た。
 ならば半導体のように官民が国産重点化を図れば良い話で、インドでは国内生産に連動させた補助制度も進む。もはや原発拡大のための方便に見える。
 「30年代に原発稼働ゼロ」を決めた民主党政権時のエネルギー戦略では国民の意見聴取や、討論を経て意識の変化を探る「討論型世論調査」を行った。
 討論は「原発ゼロのシナリオはあるのか」「あるとする場合はこの国がどのような社会に変わるか」など本質に迫った。
 短期間の調査で意思決定したことへの批判もある。ただし単なる産業政策の枠を超え、人々の原発への意識に寄り添う議論は欠かせまい。
 計画づくりのあり方を根本から変える必要がある。

 ■低コストには程遠い

 過去の計画で分科会委員を務めたエネルギー政策の第一人者、橘川武郎国際大学長は今回の原案を見て「無意味な計画になってしまった」と話す。
 今回主力化を明記した再エネは電源比率の40年度目標が4~5割と幅があり、3~4割の火力に至っては石炭、天然ガスなど内訳を示していないからだ。
 あいまいな数値では設備投資も二の足を踏む。これで本来目的である脱炭素化が進むのか。
 一方で原発は自国技術でまかなえ、コストも他電源と遜色ないことを強調。敷地内に限り認めていた建て替えの要件緩和や次世代革新炉開発も盛り込む。
 だが経産省の将来試算ですらコストは10年間で1.5倍に増える。工期の長期化でさらに上振れするという専門家もいる。使用済み核燃料の最終処理もいまだめどが立たない。
 再稼働審査中の北海道電力泊原発は安全対策費が5千億円超に膨れ、維持管理費など合計は1兆3千億円に上るとされる。
 新増設は割に合わないためか電力各社は既存原発を延命し、関西電力の高浜1号機は先月に運転50年を超えた。15年後に国内で15基程度が50年を迎える。
 計画原案の原発比率は2割程度と現行計画と同水準。「依存度軽減」削除は老朽原発の廃炉先送りに口実を与えるだけだ。

 ■電力危機を検証せよ

 先端半導体製造を目指すラピダス(東京)が千歳で来年試作ラインを始動し、各地で大型データセンター計画が進む。
 使用電力増が予想され、今回の原案は昨年度に比べ40年度は1.2倍になると見通す。だが予測は不確実性をはらむ。
 電力需要は経済活動に左右され足元では落ち込んでいるのが実態だ。コロナ禍前のピークに比べれば伸び率は圧縮される。電力危機をあおり原発回帰を図る動きに流されてはならぬ。
 需給は技術革新や省エネによっても変わる。NTTはデータを光信号のまま高速で送る「光電融合」技術の開発拠点を千歳につくる方針だ。消費電力を100分の1にする目標である。
 石狩では京セラ子会社が再エネ由来電力のみで稼働するデータセンターを全国で初めて10月に開業した。「再エネによる利益を地域に還元」するという。
 
 再エネ普及を阻む脆弱(ぜいじゃく)な送電網の改良や、不安定さを補う蓄電施設強化も急務である。
 
 福島事故を風化させず、原発に頼らない技術開発こそが日本の国際競争力を高めるはずだ。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月19日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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