【小社会・12.19】:勘繰り
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.19】:勘繰り
色づいたナンテンの実に誘われて、庭にヒヨドリが訪れるようになった。冬の風物詩だが、食べ方が面白い。たくさん実っているのに、毎日少ししかついばんでいかない。
調べると、ナンテンのしたたかな戦略だという。ナンテンは野鳥が実を丸のみし、ふんと一緒に種を落としてくれることで生育地が広がる。ところが一気に食べられると、まとまって排出されやすい。
それよりは数粒ずつ、あちこちに落としてほしい。そこで、一度にたくさんは口にできないように「わざと果肉に苦みと毒を仕込んでいる」(多田多恵子著「身近な植物に発見! 種子たちの知恵」)。
政府がエネルギー基本計画の改定案を示し、原発回帰に大きく踏み込んだ。これまでは東京電力福島第1原発事故を猛省し、「可能な限り原発依存度を低減する」と掲げてきた。再生可能エネルギーの「最大限の導入」も明記していたのだが。
いま思うと国民を誘い込むための赤い実だったのだろうか。原発は「重要なベースロード電源」とも記していた。こちらは脱原発の大きな根が張らないように工夫し、原発推進も狙う毒だったのでは。
そう勘繰りたくもなる。改定案は肝だった「原発依存度を低減する」を削除。原発も再エネも「最大限活用することが重要」とする。福島の復興はまだ道半ばで、原発を巡る国民的な論議も不足している。この新しい政策、丸のみするわけにはいくまい。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】 2024年12月19日 05:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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