《社説①・12.02》:温室ガスの削減目標 脱炭素への野心が足りぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.02》:温室ガスの削減目標 脱炭素への野心が足りぬ
地球温暖化は人類が直面する最大の環境問題である。日本は先進国として、実効性の高い対策を進める責務がある。
環境、経済産業の両省が温室効果ガスの新たな削減目標案を公表した。2035年度に13年度比で60%減らす。現在掲げている30年度46%減の延長線にある。この削減ペースを維持すれば、国際約束としている50年の排出量実質ゼロを達成できるという。
パリ協定に基づき、各国は来年2月までに35年の削減目標を提出することになっている。今回の案は、脱炭素社会実現までの道筋を示すことで、企業の対策強化や市民の意識改革を図る狙いもある。
ただ、この目標では不十分といわざるを得ない。
国際社会は、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を1・5度までに抑えることを目指している。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などの分析では、35年には世界全体で13年比66%減とすることが必要だ。
対策を強化しなければ、今世紀末の気温は3・1度上昇すると、国連環境計画(UNEP)が予測した。今年は最も暑い1年となる見通しで、自然災害も激甚化している。
1・5度目標の達成は遠のくばかりで、削減ペースの加速は喫緊の課題だ。とりわけ温室効果ガスを大量排出してきた先進国には積極的な貢献が求められている。
日本は再生可能エネルギーの普及を進め、国際社会から批判の強い石炭火力発電への依存度を下げなければならない。
温暖化対策は、経済を底上げし、次世代によりよい環境を残すための投資と位置づけるべきだ。
これまでも省エネ効果の大きな青色発光ダイオード(LED)など日本発の技術が世界の対策に貢献してきた。最近では、軽量で曲がることから設置場所の制約が少ない「ペロブスカイト太陽電池」が国際的に注目を集める。
アジア・太平洋地域には、経済成長に伴い排出量が急増している国が多い。日本が培った技術や排出削減を促す資金の提供などの支援も強化したい。
新たな技術開発を促し、国際競争力も高める。そのためには野心的な目標の設定が不可欠だ。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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