【社説】:被買収県議ら「起訴相当」 責任認め、けじめつけよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:被買収県議ら「起訴相当」 責任認め、けじめつけよ
2019年夏の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、河井克行元法相=実刑確定=らから現金を受け取った広島県議や広島市議ら35人を、検察審査会が「起訴相当」と議決した。
既に辞職している市町議や後援会員ら46人については、再捜査を求める「不起訴不当」と議決。検察の捜査前に現金を返却していた県議や後援会員ら19人は「不起訴相当」とした。
カネで票を動かすことは、民主主義の根幹を揺るがす。公選法の買収事件は買収する側と被買収側で成り立っており、双方が罪に問われる。しかし事件を捜査した東京地検特捜部は「受動的な立場」だったなどとして、被買収の100人全員を不起訴処分としていた。
受け取った側だけ不問に付すのは極めて異例のことであり、何より公正を欠く。有権者が納得できるはずもない。検審の議決は公職にあるかどうかを重視しており、政治家により重い責任を求めてもいる。市民感情に沿う当然の判断だと言えよう。
事件については、買収資金の出どころや、自民党本部から参院選前に提供された計1億5千万円の使途など、未解明の部分が多く、今なお真相はベールに包まれている。
国民から選ばれた審査員による議決を、検察は重く受けとめるべきだ。現金を受け取ったのに責任を取ろうとしない議員はもちろん、巨額の資金を提供した党も、事件はまだ終わっていないことを肝に銘じなくてはならない。
「起訴相当」の35人と不起訴不当の46人は、検察が今後再捜査し、起訴するかどうかを改めて決める。35人については再び不起訴としても強制起訴される可能性がある。
議決は「起訴相当」の理由について「公職に就いていたにもかかわらず10万円以上の高額の金員を受領し、直後に返還するなどしておらず、辞職もしていない」「責任の重さ、情状の悪質性に鑑み、起訴するのが相当だ」としている。買収が法律違反であることは言うまでもなく、議員たちには分かりきったことだろう。
そもそも被買収側の議員らは、起訴できるだけの証拠がありながら検察の裁量で不起訴処分となった。にもかかわらず、公職に居座り続けることに、有権者は不信感を募らせている。自らの罪や責任と向き合い、辞職するのが筋ではないか。
議決は、検察の判断に対し「金員の受領が重大な違法行為であることを見失わせる恐れがある」とも述べている。至極まっとうな指摘であり誰しも納得できよう。早ければ3月下旬から順次時効が成立する。再捜査を急いでほしい。
自民党も傍観できないはずだ。ところが広島選出の岸田文雄首相は議決を受けて「個別事件に関わるのでコメントは控える」と述べた。党本部が河井氏側に提供した選挙資金の使途についても「党から既に説明がなされたと承知している」と再調査の必要性を改めて否定した。党県連も「検察による今後の再調査を待って考える」としている。そんな悠長なことで許されようか。
事件に関わったすべての人が事の重大さを認識すべきだ。うみを出し切り、あしき慣習を断ち切らなくてはならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月30日 06:36:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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