【天風録】:希望の光
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:希望の光
分かっているのに人や物の名前が思い出せず、「あれ」「それ」で話している。何をしようと席を立ったのか、いつの間にか忘れている。何度も続くと「認知症の始まりではないか」と不安になる▲ただ年を取って物忘れが増えても、認知症の始まりとは限らない。何らかの原因で脳細胞が壊れたり働かなくなったりして、記憶や思考する力が損なわれるのが認知症だ。思い出せないというよりも何も覚えられなくなる。家事や身の回りのこともできなくなり生活に支障を来す▲患者は世界に5千万人、国内に600万人いる。その7割ほどがアルツハイマー病だ。発見から1世紀余りたつが、がんと同じく根本的に治す方法は見つかっていない▲苦しむ患者や介護する家族にとっては吉報だろう。日本のエーザイと米製薬大手が共同開発した新薬「アデュカヌマブ」が米食品医薬品局から承認された。アルツハイマー病の原因とされる物質を除去し、認知機能の低下を抑える効果が期待される▲ただ死んだ細胞が再生するわけでなく、完治はできない。日本でも承認が待たれるが、年610万円もの投薬代も課題となる。人生100年時代を照らす希望の光となるだろうか。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2021年06月11日 06:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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