【社説①・12.18】:美容医療 安全確保策の構築急務
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.18】:美容医療 安全確保策の構築急務
美容医療を巡るトラブルが増えている。自由診療のため公的な監督の目が届きにくいことが背景にある。高額な契約を結ばされ、施術後に顔面まひを発症するなど深刻な例も相次ぐ。
こうした事態を受けて、厚生労働省が設置した専門家の検討会は、美容医療が安全に提供されるための対応策をまとめた。医療機関が安全管理の実施状況などを年1回、都道府県に報告することなどを盛り込んだ。
医療機関の問題点は多岐にわたり、安全最優先の体制の構築が急がれる。患者も医師にリスクを含めて十分な説明を求めることなどを心掛けてほしい。
美容医療は近年、顔のしわを目立たなくするヒアルロン酸注射や太ももの脂肪吸引など治療の幅が拡大し、心理的ハードルも下がり需要が高まった。美容外科の診療所は昨年2千を超えて3年間で4割増となった。同時にトラブルの相談も増えた。
検討会の調査では、医療機関の5割強が施術を行う医師について専門の資格などの要件を設けていなかった。患者に誰から施術を受けたか聞くと、医師のほか「受付スタッフ」や「分からない」などの回答もあった。
診療内容や体制、費用がチェックされる保険診療と違い、自由診療は医療機関が料金を設定でき、収益を上げやすい。
ただ、傷病を治療する一般の医療と同様、美容医療にも合併症や後遺症のリスクがある。医療機関が経営を優先し、患者を軽視するような土壌があるのなら変えていく必要がある。
検討会は医師法違反などが疑われる医療機関への保健所の検査が可能か、法的根拠を含め明確にすることも求めた。厚労省は対策を進める方針だ。実効性の高い内容にしてもらいたい。
医療機関側の自助努力も求められる。
検討会は関係する学会に、標準的な治療内容や問題発生時の対応などの指針の策定を求めた。美容医療は患者が前向きな人生を歩む契機にもなり得る。その価値を確かなものにするためにも、患者に寄り添う姿勢を忘れてはなるまい。
近年、臨床研修を終えた若手医師が直後に美容クリニックで働く「直美(ちょくび)」の増加が目立つ。
大学病院より残業が少なく負担が軽い上、高収入が望めることが背景にある。厚労省の調査では産科や小児科などの診療所は減っており、特定の診療科の医師が不足する「偏在」に拍車をかけているとも指摘される。
若手にも選ばれるよう、医師不足が深刻な診療科での働き方改革や待遇改善も欠かせない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月18日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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