《社説①・12.25》:旧文通費の使途公開 抜本的改革につなげねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.25》:旧文通費の使途公開 抜本的改革につなげねば
政治に関わる資金の使途を国民に広く公開するのは当然だ。議員の特権であるかのように野放図に使う運用は改めるべきだ。
国会議員に月100万円支給されている調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開などを義務付けた改正歳費法が成立した。来年8月に施行される。
旧文通費は、政治活動に伴う文書の郵送費や電話代などに充てる名目で支給が始まり、領収書の公開は不要だった。給与に当たる歳費とは別枠で、議員の裁量で自由に使われていたのが実態だ。「第2の財布」と呼ばれてきた。
見直しの機運が高まった発端は、2021年衆院選の後、月末に就任した議員に1カ月分が満額支給されたことだ。
22年の法改正により日割りで支給する仕組みに見直された。使用目的を国政に関する調査研究、広報、国民との交流などと定めて対象範囲を広げ、名称も変更した。
ただ、使途が不透明な実態は変わらず、政治資金に対する世論の批判を受けて、公開を求める声が強まっていた。
今回の法改正により、議員は毎年、使途を明記した報告書と領収書の写しを議長に提出し、公開することになる。残金があれば国庫に返納する。
これによって透明化が図られるが、課題も多い。
具体的な使途の範囲や公開方法など制度設計は先送りされた。
現在は、私設秘書の人件費や事務所の家賃など、法の趣旨に合致しないとみられる支出も多いと指摘される。家電の購入などに使っていたケースもある。
認められる使途範囲を厳格に定めることには、後ろ向きな党が多い。しかし、原資は税金であり、目的外支出を許してはならない。
デジタル化への対応も重要だ。国民が監視しやすいように、検索や分類、整理が容易な形式でデータを公開することが求められる。
自民党派閥の裏金問題を受け、政策活動費を全面廃止する改正政治資金規正法などが成立し、臨時国会は閉幕した。
だが、旧文通費のあり方を含め、政治とカネの課題の多くは来年に持ち越される。与野党は残された問題に正面から取り組まなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月25日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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