《社説①》:自民の政策活動費 不透明な金の流れ根絶を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:自民の政策活動費 不透明な金の流れ根絶を
「政治とカネ」の問題に根本から取り組むなら、放置できないはずだ。政治資金規正法の「抜け穴」となっている政策活動費の見直しである。
平成の政治改革で企業や団体から政治家個人への寄付は禁止されたが、例外的に政党によるものは認められた。自民党では政策活動費が該当する。
受け取った政治家は政治資金収支報告書に記載する義務がない。複数の安倍派議員が、派閥からのパーティー券収入の還流分を不記載にした理由について「政策活動費だと認識していた」と説明したのはそのためだ。だが、派閥は政党ではないため方便に過ぎない。
表向きは党勢拡大、政策立案などに使われているとされる。しかし、過去に各種選挙で候補者や陣営などへの陣中見舞いなどに使われたと証言する元党幹部もいる。識者は、裏金として選挙での買収に使われかねないと指摘する。
自民では規模が大きく、2022年に党幹部へ計約14億円を支出した。最多の茂木敏充幹事長は約9・7億円だった。二階俊博元幹事長は在任中の5年間に約50億円を受け取ったとされる。
同様の支出は野党にもあるが、裏金事件に対する国民の視線は厳しく、自民以外の各党は使途公開や廃止を主張している。
だが、岸田文雄首相は見直しに後ろ向きだ。公開すれば「党の活動と関わりのある個人のプライバシー、企業・団体の営業秘密を侵害する」と繰り返す。政治活動について国民が知る権利よりも、党の利益を優先する姿勢が目に余る。
政治家が好き勝手に使える「つかみ金」のような制度は他にもある。国会議員に、歳費とは別枠で月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)だ。
本来、国会議員としての活動を有権者に伝えるための費用だった。だが、使途を公開する必要がないため、飲食費などへの流用が問題視されてきた。岸田政権下で支給の日割りは実現したが、使途はなし崩しに拡大された。
政治資金を国民監視の下に置くのが規正法の趣旨だ。不透明なカネの流れを断ち切る抜本改正に取り組まなければ、国民の政治不信は払拭(ふっしょく)できない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月18日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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