【社説①】:囲碁の棋士育成 人気回復へスター輩出したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:囲碁の棋士育成 人気回復へスター輩出したい
囲碁界では、主に韓国や中国が国際的なタイトルを保持している。かつて最強と言われた日本は復活に向けて、若い才能を育てていきたい。
囲碁の中学生棋士で14歳の仲邑菫三段が3月2日から韓国のプロ棋士となり、現地の公式戦に出場する。日本の棋士が海外に移籍するのは初めてという。
仲邑三段は、2019年に新設された英才枠の第1号としてプロ入りした。昨年は13歳で女流棋聖のタイトルを獲得している。
移籍については、より高いレベルで戦えることを理由に挙げており、「韓国で女流タイトルを取りたい」と抱負を語った。
最年少記録を次々と塗り替えてきた天才少女の新たな挑戦である。更なる成長と活躍に胸を躍らせるファンは多いだろう。
囲碁は日本のほか、中韓や台湾にプロ組織があり、近年は米国や欧州にも誕生している。中韓は幼少期からの英才教育に力を入れ、台頭してきた。韓国では圧倒的な強さを誇るスター棋士が登場し、囲碁の人気が高い。
日本の囲碁界は、これを機にファンの裾野を広げられるよう、積極的なPRに努める必要がある。そのためにも、仲邑三段には韓国で実力を存分に発揮し、結果を残してもらいたい。
日本生産性本部のレジャー白書によると、2022年の囲碁人口は130万人で、ここ10年間で3分の1以下に減った。これに対して、将棋は藤井聡太竜王の活躍でファン層を広げている。
日本の囲碁界は、仲邑三段のプロ入り後も、10歳の藤田怜央初段や13歳の柳原咲輝初段ら、若い才能をデビューさせてきた。中韓との実力差を縮める狙いで、危機感の表れとも言える。
今後は学校や地域と連携して子ども向けの囲碁教室を拡充し、プロ棋士によるオンライン指導なども導入して、人材の発掘につなげることが大切だ。初心者に楽しさを伝えるゲームやスマートフォンのアプリ開発も有効だろう。
日本では伝統文化の印象が強い囲碁だが、近年はチェスなどと同様に、「頭脳スポーツ」として注目されている。中国・杭州で昨年開かれたアジア大会では公式種目となり、日本は団体戦で男女とも銅メダルだった。
日本の棋士の実力を底上げするためには、戦略的な技術強化が欠かせない。中韓との交流戦を増やし、戦術の研究をさらに深めるなどして、日本が再び世界のトップに立つことを目指してほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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