【社説・12.16】:プラごみ条約/合意目指し議論の継続を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.16】:プラごみ条約/合意目指し議論の継続を
プラスチックごみによる環境汚染を防ぐ国際条約を巡り、条約案を取りまとめる会合を韓国で開いた政府間交渉委員会が、各国による合意を先送りすることを決めた。代表団が1週間にわたって議論した結果、最大の焦点となったプラスチックの生産規制について、積極的に賛成する国々と反対を主張する国々との深い溝を埋められなかった。
交渉委の議長を務めるエクアドルのルイス・バジャス氏は「私たちの作業は完了からはほど遠い」と述べた。だがプラごみによる地球規模の汚染は急速に進んでおり、協議の失敗に落胆している猶予はない。早期の合意を目指し、各国による議論を粘り強く継続してもらいたい。
プラスチックは石油由来の合成樹脂などを主原料にしている。安価で軽く、丈夫という特長があり、衣服や電化製品、自動車、レジ袋、ペットボトルなど生活に関わるさまざまな製品に幅広く使われてきた。
分解されにくいため、不法投棄されたごみなどが河川や海洋に漏れ出し、生態系を脅かす。生物が誤って食べて死ぬほか、マイクロプラスチックが人の体内から検出される問題も起きている。脳卒中などのリスクを高めるとする研究結果もあり、健康への悪影響が懸念される。
にもかかわらず汚染の進行を止める国際的なルールがない。そのため国連環境総会で2022年に国際条約の策定が決まり、今年末までの条約案とりまとめを目指していた。
合意を阻んだのは、プラスチックの生産に関し、具体的な削減目標の設定など厳しい規制を求める欧州連合(EU)や島しょ国、アフリカ諸国側と、石油の輸出減少を恐れる中東諸国、ロシアなど産油国側との対立だ。産油国側は「(条約は)廃棄物対策に絞るべき」と反発した。
経済協力開発機構(OECD)によると、19年の世界のプラスチック生産量は00年に比べて2倍になり、今後さらに増える。その間に環境流出も深刻化していく。ただし、対策を進めれば40年までに環境流出を95%程度削減できるという。生産、消費、廃棄の全段階での対策が不可欠であることは論をまたない。
交渉委の会合は25年に再び開催されるとみられるが、難航が予想されている。日本は今度こそ議論をリードし、国際条約策定に向けて先進国としての役割を果たすべきだ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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