【社説・12.16】:エネルギー計画 原発推進の結論ありきか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.16】:エネルギー計画 原発推進の結論ありきか
国のエネルギー基本計画の改定作業が大詰めを迎えた。焦点は2040年度の電源構成と原発の位置付けである。原発の積極活用に回帰する結論ありきの改定では、国民の納得は得られない。
基本計画を話し合う経済産業省の有識者会議は原発推進派の委員が多数を占め、最初から原発の積極活用を求める意見が相次いだ。
その論拠とされたのは、生成人工知能(AI)の普及やデータセンターの増加、半導体工場新設などによる電力需要の急増だった。
電力広域的運営推進機関によると、国内の電力需要は24年度から増加へ転じる見通しだ。増加基調は約20年ぶりだが、ペースは緩やかで、当面は深刻な電力不足が懸念される状況ではない。
その先はどうか。50年度に向けて電力需要が急増する予測が有識者会議で示された。長期予測は不確実性が高い。供給力を確保するためにも継続的な検証が不可欠だ。
改定案には原発の建て替え推進策が盛り込まれる可能性もある。岸田文雄前政権が、22年12月の「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で原発の最大限活用を打ち出したためだ。脱原発からの方針転換が一層鮮明になる。
原発は建設を決めてから稼働までに約20年かかり、40年度には間に合わない。太陽光や洋上風力などの再生可能エネルギーの導入拡大を後押しする方が実効的だ。
エネルギー安全保障の観点からも、純国産である再生可能エネの推進が望ましい。
半導体工場の新設と原発推進を結び付ける主張には違和感がある。
業界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県進出では、豊富な水資源と安定した電力供給が評価された。第2工場に続き第3工場を誘致する動きもある。
TSMCは再生可能エネの利用100%を目指す企業グループ「RE100」のメンバーだ。このグループに名を連ねる米IT大手アップルは取引先に対し、使用電力を全て再生可能エネに切り替えるよう働きかけている。
名だたる企業群は原発ではなく、再生可能エネを求めている。
政府は発電時に二酸化炭素を出さない再生可能エネと原発、脱炭素型火力を組み合わせ50年の脱炭素社会実現を目指す方針だ。
原発は危険な放射性廃棄物を生み、巨大事故のリスクがある。安全対策で建設費がかさみ、米国では電力料金が大幅に上昇した例もある。
何より、危険や不安を感じる国民がいることを忘れてはならない。政府は国民の声にもっと耳を傾けるべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 06:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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