《社説②・09.24》:米4年半ぶりの利下げ 政策転換の影響に注視を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・09.24》:米4年半ぶりの利下げ 政策転換の影響に注視を
景気後退を回避しつつ、インフレの再燃も防げるか。米経済が正念場を迎えている。
米連邦準備制度理事会(FRB)が約4年半ぶりの利下げに踏み切った。政策金利を通常の2倍に当たる0・5%引き下げ、年4・75~5・0%にすると決めた。金融政策の軸足を従来のインフレ抑制から景気下支えに転換するものである。
これまで米経済の最大の課題はインフレをいかに抑えるかだった。新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復やウクライナ危機に伴う資源高を背景に、2021年春以降、物価高が加速した。消費者物価上昇率は一時、9%台まで跳ね上がった。
これを受け、FRBは22年3月から11回の利上げを実施し、政策金利を01年以来の高水準に引き上げた。この金融引き締めの効果で、今年8月の消費者物価上昇率は2・5%まで低下し、FRBが目標とする2%に近づいている。
一方で、今春以降、失業率は上昇傾向を示し、市場では景気後退懸念が台頭していた。
FRBには「物価の安定」に加え、「雇用の最大化」という使命も課されている。金融緩和への転換で景気を下支えし、雇用環境を改善することを目指している。
パウエルFRB議長は大幅利下げの理由について「『失業率の上昇なしに物価を安定させる』という強い決意の表れだ」と説明した。年内に計0・5%の追加利下げを行う見通しを示している。
ただ、今後のかじ取りは容易ではない。
インフレ再燃の芽はなお残っている。11月に選ばれる新大統領が財政拡張路線を取れば、物価上昇圧力が高まり、利下げ停止を余儀なくされる恐れがある。
逆に利下げペースが遅すぎて、雇用が悪化すれば、景気後退リスクを高めかねない。経済や物価の情勢を的確に見極め、臨機応変に対応することが求められる。
米金融政策の動向は、世界経済や国際金融市場にも大きな影響を及ぼす。異次元緩和の手じまいを進める日銀は、FRBとは逆方向の利上げ局面にある。日米金利差の縮小に伴う急激な円高・ドル安など市場の変動に注意を払わなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム【社説】 2024年09月24日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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