《社説②・12.07》:韓国政局の混迷 地域の不安定化を危ぶむ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.07》:韓国政局の混迷 地域の不安定化を危ぶむ
尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣言した韓国の政局が、混迷の極みにある。
野党提出の弾劾訴追案に反対していた与党からも、「国民を大きな危険に陥れる懸念が大きい」と尹氏を見放す声が上がった。
弾劾訴追案が可決されれば大統領の職務は停止され、憲法裁判所が罷免するかどうか判断する。
正当性を欠く時代錯誤の戒厳令を振りかざし、民主主義を脅威にさらした責任は重い。民主国家を率いる資格を失っている。
尹氏は野党が国政をまひさせたとし、戒厳令によって「北朝鮮共産勢力の脅威から国を守る」「憲政秩序を守る」と強弁した。憲法が要件とする戦時や国家非常事態に当たらない。権力の乱用だ。
国会の決議を受けて解除はしたが、民主主義の基盤を成す国会に軍を突入させた。与野党代表の拘束計画もあったとされる。
憲政秩序を守るどころか破壊した。大統領にとどまれば、同じ過ちを繰り返すのではないか。
かつて軍事独裁政権が戒厳令で市民を弾圧した記憶を呼び覚まし、社会に不安と混乱をもたらした。市民の感覚との隔たりは目を覆わんばかりだ。
混迷が長く続くことは必至の状況だ。朝鮮半島情勢の不安定化を招く恐れもある。
米バイデン政権は軍拡を進める中国や北朝鮮を抑止するため、日米韓の連携を重視した。北朝鮮の弾道ミサイル情報の即時共有や米韓合同軍事演習を重ねた。
来年1月には多国間連携に懐疑的なトランプ氏が米大統領に返り咲く。韓国の政権が機能不全に陥っていれば、安全保障協力への影響は大きい。キャンベル米国務副長官は「尹氏は重大な判断ミスを犯した」と公然と批判した。
折しも北朝鮮とロシアの軍事同盟となる条約が発効した。北朝鮮はウクライナに侵攻するロシアを軍事支援し、技術協力を見返りに核・ミサイル開発を加速させる可能性がある。
北朝鮮は南北統一を放棄し、憲法で韓国を「敵対国家」と定めたとされる。南北を結ぶ道路や鉄道を爆破するなど挑発を繰り返す。韓国の混乱に乗じて軍事的な緊張を高める恐れもある。
尹政権では、冷え込んだ日韓関係が大きく改善した。来年に国交正常化60周年を迎えるが、政権が代われば日韓関係に再びきしみが生じかねない。
東アジアの平和と安定のためにも、韓国には政治空白を早急に埋めてもらいたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月07日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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