【社説②・12.02】:水道の耐震化 国の支援強化が急務だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.02】:水道の耐震化 国の支援強化が急務だ
自治体庁舎や避難所など、災害時の防災拠点となる「重要施設」に接続する上下水道の耐震化が進んでいないことが、国の調査で明らかになった。
耐震化されている重要施設の割合は全国で15%、道内は5%にとどまった。上下水道とも耐震化されている重要施設がゼロだった道内の市町村は122と、全体の7割近くに及ぶ。
財政難や技術職員の不足などが要因とみられている。
重要施設で水が使え、排水も適切にされる環境の維持は、災害対応の根幹にかかわる。
1月の能登半島地震では、住宅の水道復旧が遅れ、水道が使えなければ日常生活のあらゆる営みに支障を来すことが浮き彫りになった。避難生活でも同様なら、その影響は甚大だ。
上下水道を運営する自治体は早急に対応する必要があるが、自助努力には限界もあろう。
政府は財政面や人材面を含めた支援の拡充が急務である。
調査した道内の重要施設は1786カ所で、上下水道の管路(排水をくみ上げるポンプ場を含む)がいずれも耐震化されていたのは88カ所だった。
取水施設や配水池といった上下水道施設の耐震化率も道内は20~52%で、各施設の大半が全国平均を下回った。
国土交通省は調査対象とした重要施設の選定を自治体側に委ねており、耐震化が十分ではない施設や自治体の数が実際はもっと多い可能性がある。
詳細な実態を政府の責任で把握することが肝要だ。
政府は今後5年間の水に関する政策の方向性を定める「水循環基本計画」を8月に閣議決定した。水道施設の耐震化や機能維持に向けて、施設の集約化や管理更新における官民連携の推進などを挙げている。
だが広大で人口減が進む道内では水道料金収入が先細り、民間参入も見込みにくい。
政府は来年度に交付金を拡充するほか、広域連携などの経営効率化を支援するという。
支援は必要だが、過剰な投資を避ける視点も欠かせない。地方の実情にあった支援のあり方を模索すべきだろう。
自治体側も優先順位を付けて耐震化を進めるなど、限られた財源と人材を有効に活用することに知恵を絞りたい。
耐震化を進めつつ、給水車の派遣をはじめとする災害時の給水体制を、周辺の自治体と整備しておくことが重要だ。
災害時に最低限確保したい水道について住民を交えて議論するなど、地域の声を踏まえた着実な取り組みが求められる。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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