【社説②・10.23】:水道網の維持 経営基盤の安定が欠かせない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・10.23】:水道網の維持 経営基盤の安定が欠かせない
上下水道は生活に不可欠なインフラである。将来も安定的に運営できるよう、経営基盤を強化する必要がある。
現状では、都道府県や市町村が運営する上下水道事業は経営悪化が深刻な状態にある。地域の人口減少や節水の普及で、水の使用量が減っているうえ、高度成長期に整備した水道管などの更新も重荷となっている。
能登半島地震では老朽化した水道管が破損し、断水が長期化する要因となった。全国的に水道管の耐震化が急務だが、2022年度末の主要水道管の耐震化率は上水道で約42%、下水道は約56%にとどまっている。
水の供給や下水の処理が不安定になると、災害時はもちろん、日常生活にも大きな支障が出る。経営の安定化を図り、事業を持続可能な形にしなければならない。
神戸市は10月、水道料金を平均14%値上げした。2000年度に345億円だった料金収入が22年度は289億円に減り、来年度は赤字の見通しとなったためだ。
水道事業が赤字の自治体は、人口減少率が高い地域ほど多い。人件費の削減で人材が不足し、専門技術が伝承されなくなるという課題も指摘されている。
有力な経営改善策の一つが、近隣自治体による広域連携だ。
複数の自治体で工事を一括発注すれば、コスト削減につながる。浄水場などを共用することで、施設を個別に更新する費用を抑制することも可能になる。
水道料金は、自治体によって異なる。連携した場合、値上げを強いられる自治体も出てくると懸念する声は根強い。
しかし、香川県のように、各自治体の異なる料金を10年間据え置くことで、ほぼ全県の水道事業統合にこぎ着けたところもある。
また、宮城県は22年度、上下水道などの運営を民間企業に委託した。20年間で300億円以上の費用削減を見込む。
地域の実情に合わせて水道事業の将来像を描き、住民の理解を得ることが大切だ。市町村間の連携には国や都道府県が積極的に関与し、利害調整に努めてほしい。
下水道を所管する国土交通省は、今年度から上水道も管理することになった。財政や技術面の支援に取り組むことが重要だ。
日本の上水道普及率は、ほぼ100%に達している。蛇口から飲めるほどのきれいな水を供給できる数少ない国の一つだ。暮らしを支える重要な事業を、どう維持していくかが問われている。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月23日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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