【考察】:安倍元首相なら「関係を清算しろ」と言うだろう…宗教団体とズブズブの自民党が今すぐやるべき3つのこと
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【考察】:安倍元首相なら「関係を清算しろ」と言うだろう…宗教団体とズブズブの自民党が今すぐやるべき3つのこと
日本には、政治の世界に影響力を持つ宗教団体が存在する。社会学者の橋爪大三郎さんは「宗教政党である公明党や日本会議、統一教会の助けを借りないと、現在の自民党は与党でいられない。国政に関与しないよう公明党は解散し、自民党は宗教団体との関係を清算すべきだ」という――。<button class="sc-jYIdPM exDZtb" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button><button class="sc-jYIdPM exDZtb" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button>
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me(株式会社プレジデント社)
※本稿は、橋爪大三郎『日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
■政党と宗教団体のWin-Winな関係
さて日本では、(カルト教団であってもそうでなくても)宗教団体が政治的パワーを持つ、という現象がある。これは、どういうことなのか。
それは、選挙のときに、まとまった票が見込めるからである。宗教団体票である。
すると、政党は、選挙を有利に運ぼうと、宗教団体と良好な関係を築こうとする。 宗教団体は、票と引き換えに、政治的な要求を政党に持ちかけることができる。これが、宗教団体の政治的パワーの源泉である。
宗教団体が、集票マシンになる。――これは、日本では当たり前だと受け取られ、あまり不思議に思われない傾向がある。けれども、国際的にみると、とってもとっても、特殊な現象である。西欧社会、たとえばアメリカでは、こんなことは考えられない。「特殊な現象」を通り越して、スキャンダルと言ってもいいほどである。
■公明党への集票に燃え上がる創価学会
創価学会の政治力の源泉は、学会員の献身的な選挙活動である。 選挙になると、創価学会は燃え上がる。親戚や友人に電話をかけまくる。ビラを配布して回る。ポスターを貼る。選挙事務所をボランティアで手伝う。ほかの政党がうらやむほどの厚い支援を、公明党は受けることができる。浮動票を集める力は、それほど大きくないかもしれない。けれども、確実に読める票が集まることほど、心強いことはない。
小選挙区制度のもと、自公の選挙協力は洗練の度を加えている。一人区の立候補を、自民党と公明党で調整する。「一人区は自民党、比例区は公明党」などと、投票を依頼する。両党が綿密に協力して、目一杯の議席を獲得して分け合うことをはかる。
政党と政党が、選挙協力をしたり、政策協定を結んだり、連立政権を組んだりすることは、問題がない。ふつうの政党同士であるならば。
公明党は、創価学会の価値観、世界観をもとに行動する、宗教政党である。創価学会の価値観、世界観がストレートに政治に反映してしまう点が、問題なのである。
■宗教政党・公明党はなぜ存在するのか
宗教教団が政党をつくる。こういう、民主主義の原則と合わないことが起こったのは、創価学会の世界観によるところが大きい。
創価学会の人びとはたぶんこう思った。政治家は腐敗し、汚職にまみれている(そうだろう)。一般大衆を大事にする、大衆のための政治が必要だ(そうだろう)。いまある政党はどれも信頼ならないから、清潔で信仰を持つ人びとの新しい政党が必要だ(ここが問題だ! )。
この最後のところが、キリスト教にもとづく西側世界の考え方と、まるで違っている。そして、民主主義の原則から逸脱していく、原因になっている。本人にそのつもりがなくても。
キリスト教は考える。人間は罪深い。しょっちゅう間違いを犯す。社会が不完全なのは当たり前である。政党も同じだ。正しい信仰というものはある。だが、正しい信仰を持っている人びとが政党をつくったからといって、ほかの政党よりましなものができるわけではない。創価学会の信仰が正しいからと言って、創価学会が政党をつくれば政治がよくなる、とは決して考えないのだ。
そのかわりに、どう考えるか。人間は間違えるが、悔い改め、間違いを正すことができる。誰にもそのチャンスがある。選挙がその機会だ。有権者が議員を選び、代表として行動する権限を与える。だがそれは条件つきだ。有権者の信託に応えなければ、つぎの選挙で落選する。どこかに理想の政治や政党があるわけではない。不断にそうやって、互いの過ちを正していくことが、政治をよくする唯一の道である。
だから教会は、「公明正大で」「清らかな」よい政党などそもそも存在しないと考える。一人ひとりが神に導かれ、まあましな行ないがどうにかできるだけだ。─こう考えれば、現実的であり、民主主義の原則とも合致する。
■「いい政党をつくろう」では政治はよくならない
創価学会は、既存の政党を信頼せず、憎み、前途がないものと思った。だから、ピュアな政党として、公明党をつくった。
これは、政治思想として、間違っていると思う。少なくとも、民主主義の考え方ではない。いい政党/よくない政党があります。いまある政党はよくない政党で、救いようがないです。だから、いい政党=公明党が必要です。これでは、政治はよくならない。むしろ、いまある政党の欠点を正して、少しでもましな政党につくり替えていく努力が大切だ。公明党さえよければいい、という考え方では、それ以外の政党がそのままになってしまう。
むしろ、創価学会としては、政治に対して厳しい批判の目を向け、個別の政策や候補者のよしあしをチェックする役割に徹したほうがよかったろう。そのためのメディア(新聞や雑誌など)も持っているのだから。
■公明党は解散し、地域政党として存続すればよい
それでは、公明党はどうすればいいか。
国政政党としての公明党は、解散するのがよいと思う。
そうすれば、創価学会⇒政治、の影響力について、一般国民の疑念を持たれなくてすむ。日本の政治も、国会運営も、ずっとすっきりするはずだ。
非自民連立政権(細川政権)の当時、公明党自身が、その道を模索した。そのあと、自公連立政権の時代が続いているが、いつまでも続くはずがない。民主主義の原点に戻ろう。公明党は、母体である創価学会を大事に思うなら、国政政党としては店じまいするのがよい。
県政以下の地方自治については、どうか。公明党が、政党としての活動を続けたいなら、地域に貢献する政党として、存続すればよいと思う。地方議会の政党は、国政の立法に関与しないのだから、宗教教団と深いつながりがあっても、社会に与える害は少ないからだ。
■共産党は看板を下ろし、反省と謝罪を
それでは、共産党はどうすればいいか。
共産党は、もともとマルクス主義の革命党だった。それがなし崩しに議会主義の政党になった。にもかかわらず、党内民主主義のあり方が不透明で、上意下達の民主集中制をそのままにしている。
まず、共産党の看板を下ろそう。そして、共産党の時代のさまざまな過ちを反省し、謝罪しよう。昔、暴力革命路線をとったこと。リンチ殺人事件で有罪となった人物がずっと党の指導的地位にあったこと。組織原則を改め、党内民主主義を確立し、ふつうの政党に生まれ変わろう。野党がもし再編統一するなら、この際解党して、新政党に合流するのもよいと思う。
それでは、乱立する野党はどうすればいいか。
自民党の長期政権が続いているのは、野党がふがいないことが原因の一つである。
私に言わせると、野党は、政治のなんたるか、政党のなんたるかがわかっていない。
政党は、選挙区で議員を育てる地方組織である。政党は、与党と野党と、二つあれば十分である。人脈や、考え方(イデオロギー? )や、過去のいきさつや、支持母体の違いで細かく分かれてはいけない。自民党が、政党として近代化できていない、いまのうちがチャンスだ。しかも自民党は、公明党の助けを借りないと過半数が取れない。それでも足りなくて、日本会議や統一教会の手も借りている。そんな自民党に、有権者の大半はあきあきしている。
■野党は一つになって「有権者のための政党」へ
乱立している野党は、どれも解散して、一つになりなさい。
ただし、統一教会との関係が疑われた野党(たとえば、日本維新の会)は、事実関係を明らかにし、処分と謝罪をしてから、解散しなさい。
政策を近づけよう、などとしてはいけない。口もききたくないほど仲が悪くても、気にしてはいけない。まず、仕組みをつくる。有権者の意思が議会に届く、パイプを設計する。選挙区の候補の公認は、予備選で有権者に決めてもらうのがいちばんいい。党の役職は、あとでゆっくり選挙で決めればいい。とにかく一度、総選挙を戦える体制をつくろう。
有権者は、いまのままの政治でいいと思っていない。その有権者の思いをきちんと言葉にして、健全な市民・有権者の思いをストレートに政策に結びつける仕組み(選挙区ごとの組織)をつくろう。それができれば政権は取れる。いや、政権を取ることを目的にしてはいけない。正しくて有効で近代的な政治のスタイルを、創作する。それを目標にしよう。
総選挙は、三回ぐらい続けて負けることを覚悟する。有権者のためを考える。有権者に合わせてはいけない。自民党よりはるかにましな政党をつくる覚悟がなければ、政治家はやめたほうがいい。
■自民党が急いでやるべき3つのこと
さて、自民党をどうすればいい。
自民党は、近代的な政党のかたちをなしていない。
それに手をつけるのが大事なのだが、これは時間がかかる。その前に急いでやることが三つある。
第一。統一教会と絶縁する。絶縁するやり方は、本書の第2部でのべた。すぐやるべきだ。
第二。日本会議と絶縁する。宗教団体に票の取りまとめを頼まない、とはっきり決める。業界団体や地元後援会とはつき合ってよいが、宗教団体とは距離を置く。これを、党の方針としてはっきりさせよう。
第三。公明党との連立を解消しよう。公明党は、宗教教団を母体とする政党で、自公連立は政教分離の原則、民主主義の原則に反するからだ。
自民党はもともと、創価学会・公明党と手を結ぶことに、反対の意見が強かった。当然だろう。自民党はその原点に、立ち戻る必要がある。
統一教会とのズブズブの関係を続けてきたことが背景になって、最大派閥の長で、元首相の安倍晋三という、自民党の大事な政治家を失った。悔やみ切れない無念な事件である。
安倍元首相がいまの自民党を見れば、何と言うだろうか。こんな結果を招いた自らの政治家としての人生をふり返って、思うところがあるだろう。そして、こう言うだろう。宗教団体との不明瞭で怪しい関係をそのままにしないで、きちんと清算しなさい。国民に胸を張れるような近代的な政党に生まれ変わりなさい。私には、そう言っている声が聞こえる。
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橋爪 大三郎(はしづめ・だいさぶろう) 社会学者 1948年神奈川県生まれ。大学院大学至善館教授。東京工業大学名誉教授。77年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『皇国日本とアメリカ大権』(筑摩選書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)など著書多数。共著に『ふしぎなキリスト教』(大澤真幸との共著、講談社現代新書、新書大賞2012を受賞)、『おどろきのウクライナ』(大澤真幸との共著、集英社新書)『中国共産党帝国とウイグル』(中田考との共著、集英社新書)など。
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元稿:PRESSIDENT Online 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・担当者:橋爪 大三郎 社会学者 】 2023年03月28日 10:17:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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