【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.07】:街から消える木陰、企業と行政の影 やりたい放題に手を貸すな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.07】:街から消える木陰、企業と行政の影 やりたい放題に手を貸すな
テレビ局が元社員から借りた「黒革の手帖」とも呼べそうなビッグモーターの経営計画書を見せてもらった。「会社と社長の思想を受け入れられない人はすぐ辞めてください」などと書かれた計画書。社長が一代で成り上がった会社にありがちな社内風土と見ていたが、この会社は私たちにとっても許し難い組織であることが明らかになってきた。
展示された中古車が道路からよく見えるように街路樹を切り倒し、下の緑地には除草剤を撒(ま)いていた。NHKの調べでは、こうしたことは北海道から九州まで18都道府県39店舗で行われていたという。映像で見ると、切り株がまだ店の前にデンと残っている所もある。
だが驚くことがある。こうした行為に警察と連携して断固、措置するという自治体がある一方で、静岡県などは「視界の確保、車両の出入りのための伐採という申請を許可しただけ」として是正や警告といった措置は取らないとしている。
一体、このブラック企業の中古車を道路から見やすくするための街路樹伐採の、どこが視界の確保なのだ。
折しも商社や大手不動産会社が樹齢100年近い古木約900本を切り倒して超高層ビル2棟を建てる神宮外苑再開発計画。記念物保存の国際機関、イコモス日本委員会が樹木伐採を抑える整備案を提案しても、小池東京都知事は「古木を切っても、それ以上に若木を植えるので新たな緑の充実だ」と自説を曲げず、「(反対意見は)ネガティブキャンペーン、プロパガンダ」と切って捨てた。
やりたい放題の企業と、それに手を貸す行政。観測史上最高の暑さのなか、街から木陰が消えていく。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)
ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2023年08月07日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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