【社説②】:男性の育休促進 休める職場の実現こそ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:男性の育休促進 休める職場の実現こそ
男性に育児休業の取得を促す改正案が国会に提出されている。子どもの出生直後の期間も、男性が育休を柔軟に取得できる制度を新設することが柱だ。さらに休みやすい職場の実現を促したい。
共働きの男女がともに仕事と子育てを両立し、その能力を発揮できる就労環境を整えることは喫緊の課題だ。男性の育休取得の促進は、その実現に欠かせない。
育休制度は原則、子どもが一歳になるまで取得できる。保育所が見つからないなどの事情があれば最大二歳まで延長できる。
男性の育休取得を進めるため、これまでも夫婦がともに取得する場合は、子どもが一歳二カ月になるまで延長できるなどの支援策が導入されてきた。
だが、厚生労働省の二〇一九年度調査では、民間企業に勤める女性の取得率83・0%に対し、男性は7・48%にとどまっている。男性の取得率は少しずつ増えてはいるが、その歩みは遅い。
改正案に盛り込まれた「出生時育児休業」(男性版産休)は、出生からの八週間に計四週分の育休を二回まで分けて取れる。現行では取得する一カ月前までの申請が必要だが、二週間前までに申請すれば取得できるようにする。
期間中の育休給付金は通常の育休同様、賃金の三分の二分が給付される。新制度は二二年十月スタートを想定している。
出産直後の妻は、育児や家事が大きな負担となる。産後鬱(うつ)を抱える場合もあり、夫が育休を取得する意義は大きい。
制度を使いやすくするには、企業の取り組みがカギを握る。
改正案は企業に対して、従業員に取得を働き掛けるよう義務付けている。制度の個別説明や上司の面談、社員研修や相談窓口設置などの環境づくりが必要となる。
最も重要なことは休みやすい職場を実現することだ。育休を取りづらい雰囲気や上司の無理解などが残る職場もある。働く側には、取得によって人事評価が下がるのではないかとの懸念が残る。企業の都合で一方的に転勤や異動が決められる雇用慣行が、取得を思いとどまらせる場合もある。
改正案には、育休取得状況の公表を大企業に義務付けることも盛り込まれた。子育てのしやすさを重視する学生にとっては、就職先選びの重要な指標となるだろう。
男性が休みやすい職場は、女性も働きやすいに違いない。男女を問わず社員の子育て経験は、企業活動にもプラスに働くはずだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年04月03日 06:40:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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