【社説①】:国会の混乱 言論の府の権威を貶めるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:国会の混乱 言論の府の権威を貶めるな
国会の混乱ぶりは目に余る。せっかく開催された2日間の衆院政治倫理審査会も、内容の乏しい問答の繰り返しに終わってしまった。
2024年度予算案を巡る与野党の協議もこじれ、最後は「数の力」で押し切るしかない状況となった。政府・与党の政局運営の拙さを改めて浮き彫りにした。
自民党の派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、政倫審は前日に続いて1日、安倍派の事務総長経験者の松野博一前官房長官と西村康稔前経済産業相ら4氏が出席し、弁明を行った。
4氏はいずれも「派閥の会計には一切関与していなかった」と述べた。資金の還流をいつ、誰が始めたのかについても「把握していない」などと答えた。
派閥の運営を主導する立場にいた安倍派元幹部の「知らぬ存ぜぬ」という説明に、不自然さを感じた国民は多いだろう。
政倫審で岸田首相を含めた自民党側は、形ばかりの弁明に終始した。国民の信頼を回復するどころか、かえって不信感を高めてしまったのではないか。
一方、24年度予算案の衆院通過を巡って、与野党は不毛な駆け引きを繰り返した。
与党は予算案の審議時間を十分に確保し、採決の前提となる公聴会もすでに開催した。衆院本会議での採決を野党に提案したのは当然と言えよう。
だが、これに反発した野党は、衆院予算委員長の解任決議案を提出するなど、審議の引き延ばしを図った。旧態依然とした国会戦術では国民の理解は得られまい。
国会を混乱させた自民党の責任も重い。政倫審の審査を公開するかどうかについて、出席者の意向の確認に手間取った。
自民党内、与野党間のどちらも調整が進まない中、首相が唐突に出席を表明したため、幕引きのための開催かと野党は反発した。
首相としては、自ら政倫審に出席することで事態を打開しようとしたのだろうが、党側は傍観的な態度に終始し、機能不全ぶりをさらけ出した。
国際情勢は目まぐるしく変化し、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増している。外交力や防衛力の強化は喫緊の課題だ。
人口減少や少子化といった問題への対応も急ぐ必要がある。政治の停滞は許されない。
首相も与野党も、日本が抱えている課題がいかに深刻か、認識すべきだ。言論の府の権威を 貶 めてはならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます