【社説・12.18】:【政治改革法合意】不信払拭へようやく一歩
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.18】:【政治改革法合意】不信払拭へようやく一歩
自民党裏金事件で揺れてきた国政に対し、国民がいま最も求めているのが不信払拭だろう。課題はなお残るものの、その民意に沿った方向で与野党が一応の合意に達したことは前進と言えるのではないか。
政治資金規正法再改正を含む政治改革法案が衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。使途公開不要で「ブラックボックス」との批判がある政策活動費を巡っては、一部温存を訴えていた自民が譲歩し、抜け穴が生まれる余地を排した野党案をほぼ受け入れた。
政治改革を巡っては、各党が法案計9本を提出。政策活動費を全面廃止する法案は野党7党が共同提出していた。与野党が法案を出し合い、議論して一致点を探るプロセスは、自民1強時代の国会から様変わりした。長短ある少数与党の国会運営にあって肯定的に評価できるだろう。国民本位の議論へさらに熟度を高めていきたい。
裏金事件による与党大敗を受け、臨時国会では各党とも政治改革に前向きな姿勢を示している。ただ、濃淡があり、政策活動費廃止の例外をつくる形で自民が求めた「公開方法工夫支出」の新設は、企業・団体献金の扱いと並ぶ大きな論点だった。
自民は、外交上の秘密や企業秘密を害する恐れもあるとして非公開の支出が必要とし、第三者委員会がチェックするとも主張した。
だが、例外をつくれば「抜け穴」になっていないかとの疑心も生まれる。必要性に関する説明も漠然としていて、他党が理解するだけの説得力を欠いた。
そもそも、お金の流れを透明化するのが規正法の趣旨、原点であり、「政治とカネ」問題の抜本改革を迫られている局面でもある。不透明な支出にお墨付きを与える公開方法工夫支出には理解が得られにくいのが現実だろう。
与野党とも国民の厳しい目を意識して、年内に成果を出すことにこだわっていた。このため、意見の隔たりが大きい企業・団体献金の扱いは来年3月末に期限を設定して議論を先送りし、一致点を見いだせた内容を成案化した。
遅きに失した感は否定できないが、不信を生む素地になってきた政策活動費がようやく廃止される。また、国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)も、使途公開や残金の国庫返納を義務付ける法改正にめどが立った。引き続き、国民感覚を反映した取り組みが求められる。
今後の焦点は企業・団体献金に移る。1990年代の政治改革で政党交付金が導入された際、5年後に見直すとされた経緯もある企業・団体献金について、野党は「政策がゆがめられる可能性がある」とし、「改革の本丸」に位置づける。
石破茂首相は「企業の政治活動の自由」「献金で政策がゆがめられた記憶はない」などと強調。必要性を訴えているが、国民が納得できる具体的な使途や透明性を高める方策を示さねば理解は得られない。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月18日 05:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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