【社説・12.20】:独仏の政治混乱 欧州安定させ協調主導を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.20】:独仏の政治混乱 欧州安定させ協調主導を
ドイツでショルツ連立政権が崩壊し、来年2月に総選挙が行われる見通しとなった。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻がきっかけで、ドイツは急激な物価高やエネルギー危機に直面していた。中道左派の社会民主党が中心の3党連立は対応策が割れて瓦解(がかい)した。
フランスではバルニエ政権が2カ月半で総辞職し、新たにバイル首相が就任した。今年に入って4人目の首相だ。
今夏の国民議会(下院)総選挙でマクロン大統領が率いる与党が敗北して以来、混乱が続いている。マクロン氏の求心力も低下する一方だ。
欧州連合(EU)をけん引する両国の政治の停滞が懸念される。欧州各国でEU統合への反対や移民排斥を唱える極右勢力が台頭する中、独仏の混乱でさらに勢いづく可能性がある。
そのうえトランプ米次期大統領は「自国第一」を掲げ、国際秩序は不安定さを増すだろう。
欧州の結束が求められる局面だ。独仏は早期に政治混乱を収束させて安定を回復し、国際協調に尽力してもらいたい。
ドイツは憲法で首相の解散権を制限している。ショルツ首相の信任案が否決されたため20年ぶりに解散・総選挙となる。
理念の異なる3党で連立を組んだショルツ政権は、発足から間もなくウクライナ侵攻があり、安価なロシア産天然ガスに頼ってきた経済が失速した。基幹産業の自動車が依存している中国市場の低迷も響いた。
2年連続でマイナス成長が予測される中、財政出動派のショルツ氏に緊縮財政派の党が反発して連立を離脱した。首相は少数与党政権の行き詰まりを総選挙で打開する狙いがあろう。
懸念されるのは極端な主張を掲げる政党が勢いづいていることだ。ドイツでは排外主義の右派が第2党に躍進しかねない。
フランスも下院選で極右政党が伸びたほか、極左政党が台頭した。中道の少数与党は政権運営に苦しんでいる。
各国で格差や貧困が深刻化し、急増する移民や難民に不満が高まっている。自国第一主義の風潮が強まり、ウクライナ支援にも影響が出かねない。
既成政党への逆風を弱めるには、こうした難題に真剣に取り組み、解決策を探るほかない。
多くの難民を生んできたシリアでアサド政権が崩壊し、内戦が収束する可能性もある。独仏は率先して中東の安定を支援することが肝要だ。
欧州が掲げてきた自由や民主主義といった価値観の維持が、多国間協調には不可欠である。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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