【主張②・12.12】:ルーマニア選挙 SNS干渉への対策急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.12】:ルーマニア選挙 SNS干渉への対策急げ
民主主義国家が、SNSを悪用した専制国家の選挙干渉にさらされている。その脅威をまざまざと見せつける事態が東欧ルーマニア大統領選で起きた。
サイバー戦に巧みな中国やロシア、北朝鮮に囲まれた日本にも人ごとではない。
ルーマニア大統領選で首位に立った親ロシア派のジョルジェスク氏に抗議する人々=11月27日、ブカレスト(ロイター=共同)
ルーマニアの憲法裁判所は6日、「公正な選挙の過程が損なわれた」として11月24日に実施された大統領選の1回目投票を無効とし、選挙のやり直しを決定した。ロシアの干渉が疑われたもので、民主主義国では異例の司法判断となった。
首位に躍り出たのは、泡沫(ほうまつ)候補と目された親ロシア派のカリン・ジョルジェスク氏である。知名度も目立った政治経験もなく、事前の世論調査の支持率は数%台だった。
「選挙活動費はゼロ」と申告した同氏はしかし、中国系動画投稿アプリTikTokを活用した選挙戦を展開し、投票では現職の首相ら有力候補を抑え、23%の支持を獲得した。
憲法裁は決定の詳しい理由を公表していない。ルーマニア情報当局は、TikTok上でジョルジェスク氏を不当に「優遇」する情報操作があったとする機密文書を公開した。同氏に関する動画などが約2万5千ものアカウントを通じ、あふれるように拡散し、有権者の投票行動に影響を与えたのである。
同氏の宣伝は政治広告と表示もされず、TikTokの一般ユーザーの目に常に入るよう工作されたとみられる。投稿に関わったインフルエンサーに多額の報酬が支払われた。資金源には暗号資産が使われた疑いも浮上した。文書はロシアなどを念頭に「外国勢力の関与」を指摘した。実際、ロシアによるサイバー攻撃も起きたという。
プーチン露大統領を「愛国者」と呼び、ウクライナ支援に反対するジョルジェスク氏に多くの有権者が共鳴して投票したのは事実である。同氏は「民意の否定」と憲法裁の決定に反発した。憲法裁は民主主義制度を擁護する意味でも、決定の理由を公表してもらいたい。
ロシアは欧米の選挙や国民投票に影響力を及ぼそうと干渉を続ける。日本も昨今の選挙でSNSが多用され、偽情報や中傷の流布が懸念される。SNSを通じた干渉は来年の参院選でも起きうるとみて、政府・国会は対策を急ぐべきだ。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月12日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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