29日付「朝日」は、2面で、以下の記事を掲載しました。この記事を読むと、安倍首相の論理を紹介する形をとりながら、それに対する憲法上の「制約」を述べながらも、全体としては「国際法上の権利を保持していても、それを行使できないのはおかしい」という「俗論」(豊下楢彦「集団的自衛権とは何か」岩波新書)に流し込む意図をもった記事と言えます。以下愛国者の邪論風に記事を解釈してみます。
http://www.asahi.com/news/intro/TKY201212280790.html?id1=2&id2=cabcbccj
一つには、「集団的自衛権は密接な関係にある他国が攻められたとき、自国が攻撃されたとみなして反撃する権利だ。国連憲章は加盟国に自分を守る個別的自衛権とセットで認めている」というウソを平気で述べていることです。加盟国に無条件で認めているような表現に意図的な狙いが透けて見えてきます。
二つには、自民党の選挙政策を紹介しながら、それを批判するのではなく、「日米同盟の絆」を理由に、「米国向けのミサイルを迎撃しようにも自衛隊の能力では届かない」と姑息にも「迎撃」=集団的自衛権行使を事実上認めていることです。これでは能力を向上させれば、すなわちアメリカの兵器を購入することで能力を向上させれば、安倍首相の主張する集団的自衛権の行使は可能になります。
三つには、「日米安全保障条約で、『極東の平和と安全』のために、米国が日本国内の基地を使うことを認めた。その代わり、日本は米国のために集団的自衛権を行使しなくても、米国が守ってきた」と平気でウソをついているのです。これも日米安保条約の行使にも憲法上の制約があることは、条約の中に明記されていることです。一般的な「絆」論という「感情論」で片付けることはできません。ここにも「朝日」の姑息さが浮き彫りになります。
四つ目には、安倍首相のホンネである「改憲して武力行使の禁止を取り去ると、世界各地で米軍とともに武力行使ができる」とする狙いを紹介していません。「論座」(04年2月号)
以上のような集団的自衛権容認の先導的記事を掲載する「朝日」を憲法擁護の立場から批判し、変えていかなければならないでしょう。
そのためには、国連憲章の紛争の解決のための方法論、憲法第9条の国際紛争の解決の方法論を豊かなものにしていくことが大切ではないでしょうか?こうした視点と方法・内容について、戦後の自民党政権は、ことごとくサボタージュしてきました。そのことで日本国民の中に、紛争の解決方法についての「思考停止」状態が生じて、それを良いことに「脅威」論と「武力抑止力」論が憲法の「平和的抑止力」論以上に横行してきた、横行させてきたのではないでしょうか?
こうした状況を何としても根本的に改善していく時期に来たというのが愛国者の邪論の思うところです。
〈ニュースがわからん!〉集団的自衛権ってなんじゃ?
ホー先生 新首相の安倍晋三氏は集団的自衛権の話に熱心なようじゃな。
A 集団的自衛権は密接な関係にある他国が攻められたとき、自国が攻撃されたとみなして反撃する権利だ。国連憲章は加盟国に自分を守る個別的自衛権とセットで認めている。だから日本にも国際法上の権利はあるけど、憲法上の解釈で使うことはできないというのが政府の立場なんだ。
ホ なぜじゃ?
A 憲法9条の戦争放棄の解釈で、政府は自衛権の行使に3条件をつけている。①日本への急迫不正の侵害がある②排除のため他に手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまる、だ。これだと、日本への攻撃ではないから集団的自衛権は行使できない。
ホ 米国との約束も関係あるんじゃろ。
A うん。日米安全保障条約で、「極東の平和と安全」のために、米国が日本国内の基地を使うことを認めた。その代わり、日本は米国のために集団的自衛権を行使しなくても、米国が守ってきたんだ。
ホ 安倍首相は、行使を認めようというわけだな。
A 自民党が衆院選で公約した。「日米同盟の絆」を強めるとして、二つの例を挙げている。公海で離れて、ともに活動する米艦が攻撃された場合と、日本周辺で発射されたミサイルが米国に向かう場合だ。図。
ホ ニつの例―。
A 2007年に第1次安倍倍内閣が設けた有識者懇談会は、この2例で行使できると提言した。首相は就仕後初の記者会見で、有識者から改めて意見を聴いて「また検討を始めていきたい」と語った。
ホ ホホウ。
A でも、米艦攻撃には個別的自衛権で対応可能とみる専門家も多い。米国向けのミサイルを迎撃しようにも自衛隊の能力では届かない。限定的でも、行使を認めれば[専守防衛]の日本の方針が大きく変わりうるだけに、落ち着いた議論が必要だ。 (野上祐)