愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

やったもんが勝ち!色々問題アリだが消費税増税中止を主張せず改善を期待し容認するマスコミの犯罪性!

2013-10-02 | 日記

安倍首相の消費税増税決定を受けて、今日の全国紙と地方紙は以下のようなテーマで社説を書きました。このテーマを視ただけで、この消費税増税の大義名分も展望もないことが判ります。同時に、全国紙も地方紙も、そのテーマを読んでみて判ることは、不思議なことに、今回の増税について、中止を求めたものが、実は、一つもないことです。これが最大の特徴です。安倍自公政権容認、激励・応援歌となっているのです。この手法・手口です。問題は。世論誘導装置としてもマスコミの姿が浮き彫りになってきます。

例えば、こうです。

「目的を失った消費増税」だから、目的を失わないように安倍さん

増税の原点を忘れた決定だから、安倍さん、原点を忘れな

というように、テーマの最後のフレーズは、安倍応援句なのです。ゴマカシ・スリカエ・反対の振り、問題を指摘しながら、容認するというトリックなのです。具体的には、以下をご覧ください。

朝日

消費増税の目的をはき違えていないか。安倍政権は、国民の厳しい視線が注がれていることを自覚すべきだ

毎日

増税によって、社会保障の持続可能性は高まり、財政を健全化していく第一歩となる。その結果、国民、とりわけ若い世代が抱く将来への不安がやわらぎ、不透明感が解消されていくことも期待される。しかし、これだけでは不十分である。政治が、民間が取り組まなくてはいけない課題は多い

読売

首相が自らの責任で重い決断をした以上、これを受け止めるしかあるまい。消費増税で景気を腰折れさせては本末転倒だ。政府は経済運営に万全を期さねばならない。

東京

終始、国民不在のまま進んだ大増税は、本来の目的も変質し、暮らしにのしかかる。一体、何のための大増税か−。疑問がわく決着である。…増税の意義がまったく見えない。わたしたちは、現時点での消費税増税には反対を唱えてきた。何よりも、この増税の決定プロセスには正統性がない…手続き違反だし、国民への背信行為である。…消費税増税の理念は変質し、国民に負担を求める大義も失ってしまった…国民から吸い上げた消費税を原資に、財界や建設業界といった自民党支持基盤に還流されたり、減税に充てられる構図…このままでは社会保障の充実も財政再建もかなわないまま、消費税率だけが上がっていくことになりかねない。 安倍首相は「持続可能な社会保障制度を次の世代にしっかりと引き渡すため、熟慮の末に消費税引き上げを決断した。財源確保は待ったなしだ」と理由を述べた。そうであるならば、やるべきことは、安心できる社会保障制度の将来像を具体的に描き、その実現のために無駄な財政支出を徹底的に削減し、公平な負担を確立する。それなしに国民の理解は得られるとはとても思えない。

信濃毎日

あまりに企業優遇に走りすぎてはいないか。国民に広く負担を求める一方で、黒字企業の減税をするというのではバランスを欠く。…しかし企業はもうけても賃金を増やすとは限らない。むしろ利益は内部に蓄え、人件費を減らしてきたのがデフレ下での行動ではなかったか。確実な賃上げに、どうつなげるというのだろう。…97年の増税でも見返り減税や公共事業が大盤振る舞いされ、かえって台所事情は苦しくなった。その教訓が生きていない。…甘いことしか言わない政治家にはレッドカードを突きつけよう。多くを求めれば、負担が増えるのは当たり前。国の財布も自分の財布と考えたい。私たちの矜持も問われている。(引用ここまで

 

ここに国民世論と乖離しているマスコミの実態があります。マスコミは、政府や、いわゆる御用学者(テレビコメンテーター)の言い分を無批判的に垂れ流してきました。消費税増税に頼らない方途が提案されているにもかかわらずマスコミはマスメディアをとおして、それらの意見を排除してきました。それでも全国各地で展開されている消費税増税反対の運動と国民の「増税は嫌」という感情が、国民世論としてカウントされてきたのです。しかし、そうした国民世論に反した政策を安倍自公政権が選択したにもかかわらず、この決定を容認してしまったのです。

安倍自公政権の応援団長的存在である産経は、以下のように書いているのです。「反対する声」が「根強い」から「これからも丁寧な説明が欠かせない」ということは、「丁寧な説明」が不足しているということでしょうか。それとも反対の論陣と声があるから、惑わされているので、もっと「丁寧な説明が欠かせない」と言っているのでしょうか。いずれにしても、「安定的な社会保障財源の確保と財政健全化に向け、確かな一歩を踏み出した意義は大きい」ので、世論など関係ないということでしょうか。恐ろしいと言わねばなりません。この論理を使えば何でもアリということになり、政府の言い分が正しければ、国民は従えということになります。産経は、中国・北朝鮮を批判することはできないでしょう。

産経

来年4月から予定通りの消費税増税の実施を「支持する」と答えた人は、3分の1にとどまった。生活に直結する消費税増税に反対する声は根強い。これからも丁寧な説明が欠かせない。引用ここまで

どうでしょうか。国民を容認させるために、あれこれの口実を振りまきながら、増税を煽って煽ってきたのです。しかし、それでも国民世論は増税容認にはならず、反対が多数派だったのです。当然です。生活がかかっているからです。

だからこそ、この増税決定について、様々な問題点を指摘せざるを得ないのです。昨年の3党合意の際の「大義名分」、すなわち財政再建・社会保障改革・「景気」・デフレ回復などについて、ハッキリと増税によって克服できると確信を持って語る社説はありません。今後の見通しもないことが判ります。ここに、今回の消費税増税の大義名分のなさが浮き彫りになるのです。

しかし、繰り返しますが、どの全国紙も地方紙も、だからと言って中止を求めたものは一つもありません。そればかりか、安倍首相に期待・応援のメッセージを送っているのです。これこそがナチスの手口の典型です。増税の負担を課せられる国民はたまったものではありません。各紙が心配している諸々のこと、すなわち

1.賃金が上がらなかった

2.消費が冷えた

3.増税分が社会保障の財源に使われず、削減された

4.企業の内部留保は増えた

5.非正規雇用が改善できなかった

6.国債が発行され、国家財政の赤字が増えた

7.東日本大震災の復興が遅れた

8.増税分が公共事業費に使われた

 

というような事態が起こったら、マスコミはどうするのでしょうか。新聞はどのように責任を取るのでしょうか。愛国者の邪論が、このことを問題にするのは何故か。それは、この間の自民党・自公政権、民主党政権の政策こそが、今日の「結果」をつくりだしていること、このことを教訓化せず、一般的に安倍首相のリーダーシップに期待をするのは、あまりに無責任だからです。

 

同時に、この間の東日本大震災の復興の遅れ、非正規雇用の増大と賃金削減と「内部留保」「現金現金・預金」の巨額な溜金、国債の巨額発行、社会保障費の削減など、その要因について、マスコミの報道を含めて検証をしてきたでしょうか。以下の言葉には、この間の政治の失政についてのマスコミの責任は見えません。

こうした視点では、また同じ過ちを繰り返すことでしょう。この手口は、戦前、軍部の謀略によって引き起こされた武力挑発・暴発から15年にわたる戦争に発展していったことを想起すれば、いっそう明らかになります。それは、その都度反対・停戦を呼びかけず、ズルズルと、事実上戦争を容認していってしまった手法と同じです。

戦後においては、日米安保条約調印前後のマスコミ報道と同じです。そうした視点が、あれだけの問題が起こっている沖縄の米軍兵士の問題やイラク戦争で、あれだけの民衆が殺されても、「抑止力」論を口実とした日米軍事同盟容認論に反駁も廃棄も呼びかけないことと同じです。逆に日米軍事同盟繁栄論に反論もできないのです。いや、日米軍事同盟があったから、マジで繁栄したと思っているのです。安倍首相の「公共財」論の検証すらしていないことが、そのことを裏付けています。ベトナム・アフガン・イラクン民衆が数え切れないほど殺されてもなお、日米軍事同盟繁栄論に与しているのです。恥ずかしい歴史認識と言わねばなりません。

このことは、橋本消費税増税後に、13年間も自死者が3万人も続いてきたことを検証もせず、消費税増税を仕方ないと煽ってきたこと、垂れ流してきたこと、その結果として今回の決定があったことを教訓化していないことと同じです。これでは「歴史に学ばない!」のは日本国民の特性だと言われてしまうことにもなりかねません。恥ずかしい限りです。以下ご覧ください。

北海道

政府の社会保障制度改革国民会議の最終報告は、国民に痛みを強いる内容が並び、持続可能な年金制度や医療保険制度一元化などの抜本改革を見送った。民主党はこれを不服とし自民、公明との3党実務者協議から離脱した。放置していいはずがない。首相は率先して協議再開を呼びかけるべきだ。社会保障の将来像を国民に明示することが、政治の果たすべき最低限の約束事だ。

河北新報

目先のことを言えば、生活者が負担させられる消費税で、あたかも企業の減税分が賄われるようにさえ映る。負担を負うのは独り生活者のみの観が強い。消費税増税は社会保障制度改革と一体だったはず。復興法人税を廃止するのであれば、政府は年末までに、社会保障の再構築とともに賃金上昇に道筋をつけ、大方の家計に恩恵が及ぶ仕組みづくりに腐心すべきだ。

神戸

だが、その言葉に違和感を覚えた国民は少なくないだろう。増税の目的であり、一体だったはずの社会保障と財政の立て直しの道筋がはっきり示されていないからだ。首相が増税と共に求めたのは、景気の腰折れを防ぐための経済対策だった。しかし、その内容は国民に将来の「安心」をもたらし、増税の痛みに見合うものといえるのか。…好景気で企業の業績が伸びた時でも、利益を賃金に配分せず、株主への配当と内部留保に回す。1990年代からそうした経営が定着し、労働者の賃金は減少する一方で、企業の内部留保は200兆円以上に膨れ上がった。その構造に手をつけねば、増税で国民が負担したお金を企業がため込むだけに終わる可能性がある。…そうした状況を考えれば、内部留保をはき出させ、賃上げにつながる施策が必要だ。…増税が借金体質の改善につながらなければ、日本の財政に対する世界の信任が揺らぎかねない。もはや失敗が許されない状況にあることを肝に銘じてほしい。…この増税を行き詰まった財政、税制立て直しの転換点にしなければならない。…国民が一番知りたいのは、その点だ。安心が得られぬまま、負担だけが増える。そうした事態に陥らないために、社会保障改革と財政再建を着実に前進させねばならない。

中国

口では財政再建を唱えるが、歳出削減の具体策も気概も安倍首相からうかがえないのが何より気掛かりだ。少子化、貧困、格差の時代である。国民に一定の我慢を求めなければ、この国が立ちゆかなくなるのは間違いなかろう。とはいえ、弱きよりも強きを助ける姿ばかり見せつけられては、国民は政治に愛想を尽かす。

佐賀

増税は前政権時の1年前に民主、自民、公明3党による合意で敷いたレールではある。それでも批判覚悟で増税実施を最終判断した。困難かもしれないが、首相の言葉通りになればと願う。…年金や医療がどうなるか、増収分がどうなるか。納税者もしっかりチェックする必要がある。

経済対策5兆円は、税率上げ幅3%の2%分に相当し、何のための増税か分からなくなるほど大きい。財政再建とデフレ脱却を両立させたいとの意気込みは伝わるが、だからこそ無駄のない対策を求めたい。

南日本

成長と財政再建とのバランスをどのように図っていくのか。政府は今後、ますます難しいかじ取りを迫られることになろう。

沖縄タイムス

景気の腰折れを防ぐため公共事業を大幅に増額するという政策は、財政規律を崩しかねない危うさを秘めている。財政不安から国債が売り込まれ、金利が急騰するリスクも否定できない。安倍政権の経済政策「アベノミクス」はまさに、正念場を迎えたといえる。アベノミクスは大企業や資産家、投資家に大きな恩恵をもたらしたが、日々の生活費を切り詰め、つましく暮らしている庶民や地域経済には恩恵が届いていない。(引用ここまで

第4の権力としてマスコミ、ジャーナリズムとしての知見に伴う提案、意見表明すら放棄して、消費税増税は、いろいろ問題はあるけれども、財政再建と社会保障の財源確保のためには仕方ないとして、後は安倍政権の手腕に期待を寄せるなどというのは、責任放棄といえます。具体的な展望に確信をもっていない、まさに神頼み的容認です。これは戦前ドイツの活躍に期待して、戦外交と戦争の戦術を決定していった政府と手口は同じです。戦略なき戦術は、その時その時に右往左往するだけです。今、現在の安倍自公政権の政策決定とマスコミ報道は、このことを象徴しています。

以下一覧をご覧ください。

全国紙

朝日     17年ぶり消費増税/目的を見失ってはならぬ 2013/10/2 4:00

毎日     消費税8%へ/増税の原点を忘れるな2013/10/2 4:00

読売     消費税率8%へ/景気と財政へ首相の重い決断2013/10/2 2:00

産経     消費税8%決定/日本再生へ確実につなげ 成長戦略の具体化が急務だ2013/10/2 6:00

日経     消費増税を財政改革の出発点に2013/10/2 4:00

東京     増税の大義が見えない/消費税引き上げを決定2013/10/2 8:00

地方紙

北海道    消費税率8%へ/暮らしの破壊許されぬ2013/10/2 10:00

陸奥新報   消費税引き上げ「賃金アップへ知恵を絞れ」2013/10/2 10:05

秋田魁新報  消費税増税決定/本来の目的を忘れるな2013/10/2 10:05

東奥日報   地方経済に目配り不可欠/消費増税実施決断2013/10/2 10:05

岩手日報   消費税上げ決定/「二兎」を追うと言うが2013/10/2 10:05

河北新報   「増税」経済対策/生活者軽視、納得できない2013/10/2 8:00

福島民友   消費税率引き上げ/影響和らげ復興遅らせるな2013/10/2 12:05

茨城     消費増税実施決断/経済と財政の再建両立を2013/10/2 4:05

神奈川    消費税8%に/景気失速の回避が責務2013/10/2 12:05

信濃毎日   消費増税/企業優遇が過ぎないか2013/10/2 10:05

新潟日報   消費税8%決定 財政再建の処方せん示せ2013/10/2 10:05

福井     首相、消費税8%を表明/家計、地域支援が足りない2013/10/2 8:05

岐阜     消費税増税/生活弱者向けの対策図れ 2013/10/2 10:05

京都     消費税8%へ/社会保障のため、忘れるな2013/10/2 12:05

大阪日日   消費増税は間違いだ2013/10/1 12:07

神戸     消費税増税決定/痛みに見合う安心はどこに2013/10/2 8:05

中国     消費税8%へ/経済再生 両立できるか2013/10/2 10:00

山陰中央新報 消費増税の決断/経済と財政の再生目指せ2013/10/2 14:07

山陽     消費税引き上げ/生活守る目配り忘れるな2013/10/2 10:05

徳島     消費税8%/財政再建も急がなくては2013/10/2 10:06

高知     消費税8%へ/「一体改革」の原点に返れ2013/10/2 10:06

西日本    首相の消費税増税表明/「国民の理解」は深まったのか2013/10/2 12:00

佐賀     消費増税実施を表明/首相の決断、評価したい 2013/10/2 8:07

佐賀     消費増税対策/家計支援策こそ拡充を 2013/9/28 8:07

熊本日日   消費税増税表明/安易に財政規律を緩めるな2013/10/2 12:06

南日本    消費増税決定/国民の暮らし守れるか2013/10/2 8:06

沖縄タイムス 消費税率8%/庶民の生活守れるのか2013/10/2 10:06

日本共産党  主張/消費税率引き上げ/国民は増税の実施を認めない [2013.10.2]

         主張/9・27国民大集会/消費税増税中止の一点で [2013.9.24]

         主張/消費税4月増税/無理押しは矛盾深めるだけだ [2013.9.18]


日本のマスコミの不正が消費税増税報道で鮮明に!マスコミを憲法の人権民主主義の立場に立たせるためには

2013-10-02 | 日記

昨日のNHKと今日の朝日の消費税増税報道を検証してみました。びっくりするほど共通していました。呆れるばかりです。この報道がどのような意味を持つか、ということを考えてみました。

日本のマスコミが、中国や北朝鮮の人権と民主主義を批判する報道を繰り返し、「日本より酷い」「日本はそんなことはない自由な国だ」「日本の方がまだましだ」と扇動していることは周知の事実です。愛国者の邪論は、中国や北朝鮮のことを擁護するつもりなど、毛頭ありません。アメリカの人権問題にしても、ロシアのそれにしても、そうです。

愛国者の邪論が問題にしているのは、自由と民主主義という価値観を共有している国の人権と民主主義の問題点はスルーしておきながら、価値観を共有していない国の人権と民主主義は大騒ぎし、そうして日本国内の人権と民主主義の問題はスルーする問題です。そうして自国の政権を擁護するのです。国民の判断に委ねることをスルーするのです。ここにあるのは「他人の振り見て我が振り直せ」論の欠落です。

今日本国民が最も課題としなければならないのは、自分たちの生活の改善、幸福追求です。そのために不断の努力です。そのために隣国と連帯すること、国際社会の信義・信頼を得ていくことです。このことは日本国憲法の前文に書かれているとおりです。

そこで、現在のマスコミの問題点を指摘している記事を掲載しておきます。この点が改善できれば、朝日の社説の指摘する現金・預金220兆円と内部留保260兆円という財産・資産を国民のものとして、国家のものとして使えるということです。このことこそが、国際社会において名誉ある地位を占めることになると思います。

以下の憲法の原則をお読みください。今、企業に求められていることは、この原則に対する自覚と社会的責任を果たすことです。マスコミは、このことを自覚して報道することです。

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。(引用ここまで

それでは、この二日間の記事を根拠づける資料を掲載しておきます。ご覧ください。

安田尚「現代のマスメディアと世論形成」(『経済』03年8月号)より

本当の「対立」を隠すための見せかけの「対立」

見られたように、新聞倫理綱鎖も放這倫理に関する規定も、報道の「公正」(=「公平」)に関してはほぼ同じといえる。しかし、これらの規定には其通する特徴があるのだが、それは「公正」とは何かについて定義も説明もない点である。一体、具体的にはどうすれば「公正」が保たれているとご‥えるのだろうか。これについては、後述することとして、ここで注目したい第一の点は、ほぼどの規定でも「公正」と関連して「意見が分かれている問題」については「できるだけ多角的」に扱えと異目同音に述べている点である。

 しかし、筆者が疑問に思うのは「放送法」でもメディア諸団体も必ず規定しているこの「論点の多角的提示」条項を、目本のメディアは本当に守っているのかという点である。

「カレー・ライス」と「ライス・カレー」の違いぐらいの瑣末な対立を、取り上げたところで意昧はあるまい。つまり、意見の分かれている問題について、偽の「対立」や偽の「論争」を演出し、本当の対立を隠していないのか、という問題である。見せかけの「多様な意見」、つまり本質においては対立していない意見を提示したり、あるいはそうした意見の持ち主を討論に参加させてみたりしてはいないだろうか。筆者が日本のメディアに望みたいのは、状況の根底にある真の対決点を提示する高い見識である。さらに、最低限のこととして日本のメディアに要求したいのは、こうした「放送法」や「倫理綱領」の規定を厳格に守ってほしいという点である。読者や視聴者もこの点から、日本のメディアをきびしく監視すべきであろう。

 「公正」とは「釣り合い」ではない

 さて、第二に考えてみたいのは、ここでいっている「公正」とは何かという問題である。日本の「放送法」や「倫理規定」、「番組編成基準」などには、前述したように、何故か、この用語の説明は見当たらない。恐らく、この用語の淵源は諸外国の規定でいうところのImpartialtyであろうと推測できる。そこで、そのお手本となったと思われる英国BBC放送の規定を見てみよう。その「プロデューサーズ・ガイドライン」は、第二章で「公正と正確」(IMPARTIALITY&ACCURACY)という項目を掲げている。そこにはこう書かれている。「BBCは、非常に大きな多様性(great diversity)をもった、つまリオーディエンスの利害関心、信条、ものの見方を広い範囲(full range)で保持した番組を提供するものである」(傍点=安田)=ゴシックで表示

 さらに、この「公正」なる言葉に冠せられた「適切な」「妥当な」を意味すると思われる“due”の意味するところを、BBCは説明している。「この適切な公正の達成における、“due”という用語は、問題や番組の性質〔特質、本質nature〕に対する適切さ(adequate)、(appropriate)と理解されるべきである。一般的にいって、いかなる問題〔争点issue〕にも二つの側面以上のものがあるのであり、事実に関する番組における公正(impartiarity)は、数学的な均衡(mathematicak balance)によって、つまりある意見を〔それと〕対立する意見によって補完することによって達成されるというものではない」。よく考え抜かれた説明といってよいであろう。「公正」は、「数学的均衡」によって保たれるものではない、対立する二つの意見を同程度(同量)ならべて、釣り合いをとっておけば、それでいいというものではない。BBCはそう主張しているのである。

 また、事柄の性質、「問題の性質」によって、どの意見が対立し合っているのかを判断すべきだといっている。つまり、筆者も先に述べたように、メディアには、事柄の性質、問題の本質を見抜き、そこでの「真の対決点」を提示する見識が聞かれているといえよう。さらに、取り上げるべき視点は「広い範囲」、原文では(full range)の視点であることが要請されている。ところで、日本の規定における「論点の多角的提示」条項が、「できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(「放送法」の第三条)とか「できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持しなければならない」(「放送倫理基本綱領」)、といっている場合の「できるだけ多く」や「できる限り多く」なる修飾語は、おそらく、この“full”を訳したものと推測される。しかし、この両者は似て非なるものである。不思議なことに、日本語で「できるだけ」といえば、意味は反転することが多い。つまりそれは、「もしできるなら」であったり、「もし可能なら」であったりと、そのニュアンスが消極的なものに変化してしまうのである。要するに、「努力目標」以上のものではないのだ。しかし、BBCのいっている「フル・レインジ」のフルは、文字通り「満杯の」「十分な」「完全な」「最高度」の意味であり、したがって「十分に広い」「範囲」をカバーしろと言っているのである。

 対立する意見に紙面を開放

 したがって、この「公正」impartiarityは、「不偏不党」と訳されることもあるのだが、「どちらにもつかない」、「えこひいきしない」といった消極的なニュアンスで捉えられてはならないであろう。

 この点について、筆者はかつてフランスの知識人に質問したことがある。つまり、「フランスでは、『ルーモッド』紙は、エキリブル〔均衡、釣り合いの意味équilibre〕だといわれているが、それは不偏不党、どちらにもつかない、中立という意味か?」。これに対して、フランス近代史の専門家である彼は、「いや、『ルーモンド』がエキリブルといわれるのは、アンパルスィアル(impartial)という意味ではない。それは、個々の記事が均衡を保っているというよりも、〔新聞全体として〕多元的だ(pluralisme)という意味だ。つまり、ルーモンドは誰か大物政治家の発言や政府の報告書を記事にした場合、この立場に対する論敵(adversaries)にほかの欄を提供するようにしている。特に『論争』欄を提供することが多い。この欄は、新聞の外部の人たちのために提供される欄である」。つまり、いわゆる「均衡」=バランスをとった立場だといわれるフランスの有力紙「ル・モンド」は、その名に恥じぬよう、できるだけ対立する意見に紙面を開放しようとしているということであろう。積極的にバランスをとるために、多様な意見を「フル・レインジ」で載せるようつとめているのが、「公正」(=インパーシャル)な立場だというわけである。

 さて、日本のメディアの場合はどうであろうか。もちろん、日本のメディアといえども優れたバランス感覚を発揮し、「多様な意見」に対する目配りに遺漏はなきよう努めているはずである。しかし、いかにもその振り子の幅は狭いように思われる。この一〇年来の経済不況に対して、ほぼ同じような立場からの「診断」や「政策」が報道され続けているように見えるのは、なぜなのだろうか。日本のメディアが、市民運動や労働運動のデモや集会をほとんど報道しないのは、なぜなのだろうか。それは、国と同様に、日本のマスメディアも「貧すれば鈍する」の心境に陥り、「反対側の解釈」を取り上げる心の余裕を失っているからなのだろうか。

最後に簡単にまとめおきたい。メディアの外在的条件は、商業主義的圧力、政治的圧力を一層強める傾向を示している。そのため、メディアの「自立性」は脅かされる状況にある。メディアの「自立性」、つまり換言すれば「プレスの自由」は読者や視聴者の「知る権利」や「表現の自由」という民生的社会の基本的人権を実現することによってのみ、さらには報道の「公正」を積極的に維持する場合にのみ承認されうるといわねばならない。(引用ここまで

 10年前の論文の一部を掲載してみましたが、現代的課題です。この指摘を具体化する必要性・理由は何か、具体化するためには何が必要か、です。このことは、安倍首相の言動とそれを報道するマスコミを見ていると、まさに国民的課題です。

 以下、報道の原則を書いている主な記事を掲載しておきます。問題は、ここに書かれている内容で、日々記事が書かれているかどうか、検証しているかどうかです。

 

新聞倫理綱領|倫理綱領|日本新聞協会

報道倫理 - Wikipedia

会社案内:朝日新聞社インフォメーション - 朝日新聞デジタル

「開かれた新聞」委員会:会社案内 - 毎日新聞

読売信条 : 読売新聞とは : 読売新聞へようこそ

産経新聞社 > 会社·IR情報(産経信条·新聞倫理綱領·記者指針)

社是·行動規範 - 日本経済新聞

報道倫理 - テレビ東京

 

マスコミの倫理綱領 報道に生かされているか? - 日本共産党中央委員会

メディア倫理綱領/ガイドライン/基準 - メディア·リテラシー研究所

一般社団法人 日本雑誌協会 - 雑誌編集倫理綱領

公明新聞の印刷·包装を請け負い「不偏不党」捨てた毎日と朝日、池田 ...


消費税増税が決まったら、やっぱり批判・懸念記事特集を掲載した朝日の姑息は民主主義違反!言論統制!

2013-10-02 | 日記

今日の朝日の一面は

「消費税4月8%決定」の文字が躍っています。「朝刊紙面」をクリックしていただければと思います。さらに

「成長と財政再建両立」 安倍首相、経済対策に5兆円〈写真〉

(増税の先に:上)消費税10%、安倍首相「必要あるのか」〈写真〉

「消費税の理念、変質 税率8%決定」という文字がありますが、実際の新聞は「社会保障の財源深刻」という記事が掲載されています。これを読むと、「何だ、やっぱりウソか」と思いました。そこで、以下掲載しておきます。

安倍首相が来年4月の消費増税を発表した。3%幅の引き上げで国や地方の税収は単年度で約8・1兆円増えるが、高齢化で増え続ける社会保障の財源を賄うには不十分で、国の借金を減らすことも難しい。 消費税収は、年金、医療などの社会保障だけに使うと法律で決まっている。政府は来年度の増税分について、基礎年金の財源の不足分に6割弱、医療や介護が膨らむ分などに約3割を充てる。保育所の新設など社障をより充実させるために使うのは1割だけだ。2012年度の国と地方の社会保障費は40兆円強。15年度には約45兆円に増えると見込む。これらをすべて消費税収で賄うことはできないため、増税しても、借金で賄っていた社会保障のお金が少し浮くだけだ。 浮いたお金を借金減らしに回せば財政再建につながるが、お金に色はついておらず、別の使い道に回すこともできる。消費増税法には、浮いたお金を公共事業などに回せるようにする「付則」もある。安倍首相が前向きな法人実効税率の恒久的な引き下げに踏み切れば、事実上、消費増税で浮いたお金を法人減税に回したとみることもできる。 安倍首相は企業の税負担を軽くすることで企業をもうけさせ、雇用や賃金が増えて景気が回復し、税収も増える「好循環」をねらう。だが、日本の企業は欧米や中韓企業と激しく争う。競争に敗れれば、法人税を払わない赤字に転落し、本格的なリストラを迫られる。(引用ここまで

 

消費税関連ニュースの欄には、紙面のトップ記事のテーマが一覧されています。

2面 財政再建 理念が変質

3面 社会保障 充実が厳しく

4面 国会 宙に浮く定数削減

6面 家計 どう見直せば

7面 徹底解説 暮らしはこう変る

8面 3%転嫁する?悩む企業

39面 年金生活者は 派遣社員は

 

これを読むと、消費税増税は問題が多いなと思います。しかし、朝日は、消費税増税容認の「17年ぶり消費増税―目的を見失ってはならぬ」2013年 10月 2 日(水)という社説を掲載しています。これも大ウソがバレバレです。

「借金漬けの財政」の「最大の原因」は「年に1兆円ほど膨らみ続ける」「社会保障」だという認識です。これでは高齢化した国民に責任があるかのような言い方です。社会保障費に関する企業の負担については、いっさい不問です。「今を生きる私たちがもっと負担するしかない」などと情緒的な言葉でゴマカスのです。非正規労働者を増やし、社会保障費を削減し大儲けしている大企業を免罪しているのです。ここにゴマカシとスリカエ、大ウソの根本原因があります。以下記事をお読みください。

 

 それでも、消費増税はやむをえないと考える。借金漬けの財政を少しでも改善し、社会保障を持続可能なものにすることは、待ったなしの課題だからだ。「社会保障と税の一体改革」という原点に立ち返ろう。国債を中心とする国の借金の総額は国内総生産(GDP)の約2倍、1千兆円を突破した。今年度の一般会計では、新たな国債発行が40兆円を超え、予算の半分近くに及ぶ。最大の原因は、高齢化に伴う社会保障費の伸びだ。医療や年金、介護の財源は、保険料や窓口負担だけでは足りない。国や自治体が多額の予算を投じており、国の社会保障費は年に1兆円ほど膨らみ続ける。将来の世代に借金のツケを回しながら、今の世代の社会保障をやりくりする――。こんなことをいつまでも続けられるはずがない。社会保障を安定させ、財政の危機を未然に防ぐには、今を生きる私たちがもっと負担するしかない。では数多い税金のうち、なぜ消費税なのか。社会保障による給付は高齢者向けが中心だ。お年寄りの割合は上がり続けており、所得税など働く世代の負担だけに頼るわけにはいかない。しかも、現役組は賃金が増えないなか、子育てや教育、住宅など多くの負担を抱える。支援を強化しないと、人口減少に拍車がかかりかねない。こうした点を考えれば、国民が幅広く負担し、税収も安定している消費税が、社会保障の財源に最もふさわしい。あわせて豊かな人たちを対象に、所得税や相続税を強化する必要がある。格差を縮めるためにも不可欠だ。ただ、これだけで消費増税に匹敵する財源を確保するのは難しい。(引用ここまで

 

「論理的矛盾の粉飾文字」が躍っています。貧困化している国民に「幅広く負担」させ「税収の安定している消費税」という位置づけそのものが、国民無視です。安倍首相を批判する資格は、この時点でありません。朝日の姑息とスタンスは、以下に浮き彫りになります。その決定的な記事は、「法人減税への疑問」と「金融を除く企業」の「現金・預金220兆円」を「使おうとしない」と批判していることです。加えて260兆円を超えるとされている大企業の内部留保については、一切不問なのです。合わせて480兆円、約500兆円もの企業の溜めカネについて、社会保障や雇用や賃金を使えとは主張していないのです。そもそもこの「溜め金」は誰が創り出したものか、朝日は沈黙です。「国民に幅広く負担」させる前に、国民が創り出した「溜め金」に手をつけろ、と何故言わないのでしょうか。このカネが社会にばら撒かれることで、ゆくゆくは企業にも、国家財政にも還元されることは常識中の常識ではないでしょうか。

以下お読みください。

 ■法人税減税への疑問

 政府の責任は、規制改革などで経済を成長させつつ、税金をしっかり集め、むだ遣いせず効果的に配分することだ。この三つの課題に向き合わなければ、増税への理解は得られない。ところが、安倍政権は増税で予想される景気悪化への対策を理由に、これに反するような政策を打ち出した。5兆円の経済対策である。所得の少ない人の負担が重い消費増税では、低所得者への支援策が必要だ。補正予算にその費用を盛り込むのはわかる。 しかし、対策の柱がなぜ、法人税の減税なのか。 政権は、与党内の根強い反対を押し切り、法人税の減税方針を打ち出した。東日本大震災の復興費にあてる上乗せ増税を予定より1年早く今年度で打ち切ることや、その先の税率引き下げの検討を急ぐという。 企業は経済成長の担い手であり、雇用の場でもある。国際的に法人減税の競争が続いているのも事実だ。ただ、日銀の統計では、企業(金融を除く)は現金・預金だけで220兆円も抱え込んでいる。多くの企業は、収益が上向いても使おうとしない。まず、こうした現状を改める必要がある。安倍首相は税率引き下げをテコに賃上げを迫る構えだが、財政への影響が大きい一律減税の前に、賃金や雇用、投資を増やした企業の税負担を軽くする手立てに集中すべきではないか。(引用ここまで

 

国債を発行して公共事業に支出し、ゼネコンが請け負い、そのカネが社会全体のどのようの還元されたのか、国家財政にどのようにキックバックされたのか、朝日は検証もしないのです。そもそも1000兆円もの国債・税金が、どこをどのように回って、国民生活に還元されたのか、そうしたことを朝日はいっさい不問に付しているのです。

 

しかも、消費税の制度そのものに問題がるのであれば、そのような制度にもとづく増税は止めれば良いのです。しかし、一般的に「税金は安いにこしたことはない」などということばでゴマカスのです。トヨタなど輸出業者が還付金で大儲けしていることを、何故取り上げないのか。朝日の言いたいことは、中小企業の泣き寝入りを減らすことで、中小企業からもシコタマ搾り取ろうということです。

以下お読みください。 

■政権に自覚はあるか

 経済対策は支出面でも疑問がある。代表例が公共事業だ。老朽化した社会インフラの更新は急ぐべきだが、公共事業が足もとの景気を支える効果に飛びつき、「金額ありき」で上積みする姿勢がありありだ。バブル崩壊後、毎年のように補正予算を組んで財政を悪化させてきた愚を繰り返すのか。消費税の制度そのものにも課題が残る。国民が払った税金がきちんと税務署に納められることは税制の大原則である。業者の手元に一部が残る「益税」対策を徹底することが欠かせない。業者間の取引に、税額を明示したインボイス(明細書)を導入すべきだ。商品やサービス自体の価格と消費税分の区分けがはっきりすれば、取引時の転嫁がしやすくなり、立場の弱い中小事業者が泣き寝入りすることも減らせる。税金は安いにこしたことはない。それでも納税するのは、政府が暮らしに必要な政策に取り組むと信じるからだ。 消費増税の目的をはき違えていないか。安倍政権は、国民の厳しい視線が注がれていることを自覚すべきだ。(引用ここまで

自覚のないのは安倍自公政権と朝日であることは、この社説と今日の朝日の消費税関連ニュースでいっそう明らかになりました。そもそも、こういう消費税の問題点については、もっとはやく連載し、国民に報せ、議論を起こすべきでした。朝日は声欄やオピニオンなどで、一見すると批判的情報を報道していますが、肝心の問題点はスルーしているのです。

 

しかも、朝日の方針そのものが、「安倍自公政権と距離をおくどころか、極めて近い関係を保っているのです。その証拠は、安倍首相とマスコミ関係者との会食・懇談にどのように関わっているか、情報を公開していないこと、先に見たように、社会保障と消費税の関係について、ハッキリしているにもかかわらず、それでも増税を容認すること、今回の社説で安倍政権の決定を批判してみせても、安倍自公政権に、その政策決定の判断についての責任を問いかけていないこと、などなど、大ウソが透けて見えてくるのです。

 

こういうマスコミを、憲法的視点に立たせるたたかいが、まさに今、必要ではないでしょうか。消費税増税で被害を受ける全ての国民は、増税で大儲けする輩にたたかいを挑む時ではないでしょうか!

アラブの春ではなく、「瑞穂の国の春」は、この日本列島の話ではないでしょうか。